トヨタで教えられた先達の教訓14.15.16<ジャスト・イン・タイム>|元トヨタマンの目
14.ジャスト・イン・タイム<1>(豊田喜一郎氏)
汽車に乗るのに1分のことで乗り遅れたというが、1分どころか1秒だって遅れたら汽車には乗れない。
ただし、私の言うジャスト・イン・タイムとは間に合うというだけの意味ではない。
余分なものを間に合わせても仕方がないんだ。
(解説)
昭和11年、刈谷組立工場で自動車の本格生産を開始した頃、豊田喜一郎氏は「ジャスト・イン・タイム」と壁に張り出して、このことを熱心に語った。
「ジャスト・イン・タイム」ちょうど間に合う
「オン・タイム」間に合う(間に合っても早過ぎてはだめ)
15.ジャスト・イン・タイム<2>(豊田喜一郎氏)
1台の自動車には数千個の部品が使用されるが、その内の1個が欠けても、到底完全な車は出来上がらない。
これをとりまとめていくことは、並大抵のことではない。
この統制が完全にとれなければ、部品は山ほどあっても、車は1台もできないことになる。
数千個の部品をうまくまとめること……これについて独特な統制や組織を考えなければ、資金がいくらあっても足らない。
(解説)
このように、ジャスト・イン・タイムは豊田喜一郎氏により発案され、次に述べるように大野耐一氏によって具現化された。
16.ジャスト・イン・タイム<3>(大野耐一氏)
トヨタ方式の基本ともいうべきことに、我々は昔から「部品というものはジャスト・イン・タイムに集めるべきもの」ということを聞いて、なんとかこのジャスト・イン・タイムというものをうまくやる方法というものはないだろうかと考えたわけですが、逆に考えると、それは非常に簡単なことじゃないか、それは「いる物を、いる時に、いるところが、いるだけ、取りに行けばよい」ということで、運搬の系統を逆にしたわけです。
どこの会社でも、だいたい、物を造ったところが後工程へ持って行く。これを逆に、できた物はそこに置いておきなさい。欲しいところは、そこへ、いるだけ取りに行きなさい。しかも、いる時に取りに行けばよい。ということで、そういうことを1つのものの考え方として、運搬を後工程に所属させる。
その運搬は、前工程に欲しい時に取りに行く。取りに来られるところは、持っていかれただけの物を造って補充しておけば良いという考え方で、運搬を逆にした。
そうすることによって付随的に、中間在庫というものはいらないようになって、造っただけ置いて、置場がなくなったら、もう造るのをやめなければならない。
ただ大勢の人がいて、設備に余裕がある、遊ばせておいたんではもったいない、どんどん造るんだということでやると、置場がなくなってしまう。
そうすると、目で見て分かるようになる。作業者自身も自分のやっている仕事が追われているのか、あるいは余裕があるのか分かるようになる。材料はあるが、造っても置場がないということになれば、どうしても遊んでおらねばならない。そうすればそこの監督者も、「自分のところは人が多いんだ」ということが分かるし、作業者自身も「われわれはちょっと人が多いんじゃないか」気づくようなことで、結局、運搬工程を逆にしたことが、ジャスト・イン・タイムの実際のやり方として非常に効果があったのではないかと思います。