トヨタでの改善提案の内容|元トヨタマンの目
トヨタには創意工夫提案制度がある。
トヨタに入社し、実習中にも提案させられた。まだ実務もやってないのに、ムリだと思ったが、何でもいいから出せという。
当時はRV系の背の高い車がなかったので、そのようなことを提案したように記憶している。そんな提案にも最低ランクの500円の賞金をくれた。
どんな内容でもいいのだ、なにせ従業員から提案を出させることに徹底的にこだわっている。
だから毎月、膨大な数の提案がトヨタの従業員からは出される。その提案の質が経験を重ねるうちに上がってくる。
そうなるとプライドができて、アホな提案など出せなくなる。また年次が上がるに従って採点にも制度的に厳しさが加えられている。
かんばんは当初、すべてビニールケースへ手作業で印刷した紙を差し込んで作っていた。
それを各工場の生産管理の人達が1つ1つ改善を積み重ねて、とうとう「電子かんばん」にまで進化させた。
この間、20年ぐらいかけている。
外の人がこの現象をみると、トヨタの提案とは従来とまったく違う「脱・常識」の提案ばかりを出しているように見えるかもしれない。
これは違う。
トヨタ生産方式の憲法に抵触しないよう心がけながら、「常識」の範囲の小さな改善を積み重ねて、結果として「脱・常識」といった状況を実現させているのだ。
だからトヨタ生産方式を導入しようと思ったら、トヨタが積み重ねてきた歴史をすべて1つ1つ紐解いてみる必要がある。
往々にしてそれをしないで、すぐにトヨタの成果の部分に飛びついてしまう。
こうすると必ず失敗する。