トヨタでの人の増員、減員の理論
トヨタでは工場が新たな部品を作る場合、どのくらいの工数がそれにかかるか査定される。
工場技術員がそれを見積もり、本社生産管理部が決定する。
そして毎月、その見積もり値と実績値が比較され、改善があったかどうか評価される。
このような労務費の予算管理制度を実施しているのは、世界でトヨタだけだ。
トヨタでは、作業者の一挙手一投足まで会社が把握し、標準作業票にして現場に掲示する。
従って、増産になれば、合理的な算数により人の増員がされる。
逆に、減産になれば、こちらも合理的な算数によって減員がされる。
増産になっても、減産になっても、作業者1人1人の負荷は同じである。
また、すべてのライン・工程が、生産の増減に応じて、人を増減できるようにしてあり、いわゆる「定員制」を打破してある。
しかしロット生産などの工程に流れがない工場では、会社は作業者の作業内容を大雑把にしか把握できない。
従って、増産になっても減産になっても、合理的に要員の増減ができない。
そのような工場では、暇になった時、作業者は忙しいフリをする。
そのフリを会社はきちっとしたデータを持っていないので見抜けない。
逆に、増産になっても会社は安易に増員してくれない。
労使がこのようなことをしていると、相互不信が増幅し、労働争議に発展する。
トヨタでは人の投入、引き抜きが制度化され、白日のもとになっているため、この点での争議は起きない。
組合が文句があれば、現場に行けば、各作業者の標準作業票がそこに掲げてあるのだから、それを見れることができる。