コーヒーショップの改善がなぜトヨタ式?|元トヨタマンの目

コーヒーショップの改善がなぜトヨタ式?|元トヨタマンの目

トヨタ生産方式は次のような順番で進んできました。

 

①自動機械で加工が終了したら、機械を自動停止させるようにした。

②そうすれば、1人の作業者が、機械が動いている間、他の仕事ができるようになり、多台持ちが可能になった。

③機械が加工中に異常が発生したら、機械自体がそれを判断して自動的に止まり、あんどんを点灯させて人を呼ぶようにした。これにより人はより多くの機械を担当できるようになった。

④機械の配置を機種別配置から工程順配置に変え、1個ずつ流すようにした。

⑥ポカヨケを工夫して機械ごとに不良を見つけだすことができるようになった。

⑦段取改善を徹底的に行ない、機械を止めなければならない時間を2時間から3分に激減させた。

⑧生産が多ければ要員を増やすが、逆に少なくなれば要員を減らせるようなラインに、すべての工程をした。

⑧生産計画を1ヶ月間は日当りの生産種類、生産量を一定にした。

⑨生産変動は1ヶ月ごとに行われるが、その際、減産で要員が余った部署から、増産で要員が足りない部署へ応援に行かす。

⑩1日の生産でも種類を固めて流すことはせず、徹底的にバラバラの順番でラインに流す。

⑪部品メーカーからはなるべく多くの便で納入してもらうようにする。そうすれば部品メーカーもトヨタも双方が在庫を持たなくてすみ、メリットがある。

⑫このような体制にすると「かんばん」を回転させることができるようになる。

⑬生産量の増減により要員がきちっと増減できているかどうかを毎月評価できるような生産能率制度を確立させている。これがないと実施した改善がすぐもとに戻ってしまう。

 

⑧番目以降がトヨタ生産方式のオリジナルな部分で、日本企業の中でもトヨタ以外は、今だに実施できていないのではないかと思います。

この部分を実現させ、「ものづくりの体系」として確立させ、さらに日本のみならず全世界で生産活動を行ない、世界の人から評価されていると思います。

しかし①番から⑦番までの改善は、日本の一流企業ならどこでもやっていることであり、別にトヨタの専売特許ではありません。

 

ところで最近あるコーヒーショップが「トヨタ式の改善に着手」という報道がありました。

「改善活動をやったらなんでもかんでも『トヨタ式』というのはおかしい」という感想を持たれた方も多いと思います。

当然そのような感想を持たれるのは、そのコーヒーショップがまだまだ⑦番よりも下の段階だからだと思います。

しかしこのコーヒーショップも「コーヒーというものづくりではトヨタのような頂点を目指す」という意気込みも含めて「トヨタ式」といっているのではないかなあと思います。

私が今、改善活動のお手伝いをしている業種は、タイヤ、肉きり機械、大型建設機械など、さまざまですが、まだまだどこも⑦番以下です。

しかし⑬まで明確に理解できるように示してイメージさせ、日々順を追った改善を進めさせています。

 

彼らも立派に「トヨタ生産方式確立への改善活動中」なのです。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。