コンサルティング事情|元トヨタマンの目
ある韓国の大企業でのコンサルティングは、TPS推進チームが非常に充実しているため、大変楽だ。
ほぼ1ヶ月に1回のペースで3.5日間訪問し、問題点を指摘し来月までの宿題を出しておく。
そうすれば一生懸命やっていてくれて、目に見える効果を出すことができた。
宿題も純粋な私のものと、TPSチームがやらせたいことを私の口から言わせてやらすものがあり、うまくかみ合って大変うまくいっている。
ここでの問題点は私の日本語の各種データを仲介エージェントが翻訳してくれないということだった。
やはり私の書きためたデータをすべてお教えしなければ本当の効果は出ない。
しかしなにせ、量が膨大なため工数がかかるとのことだった。
でもその必要性を強く説明してなんとかその方向でいくようになりそうだ。
昨年半ばから、中国の大企業でもコンサルティングを始めた。
こちらはTPSの学習は市販の本でしていたため、ある程度の知識はみんなにあったが、その本も私が見ても変に理屈っぽくて、到底TPSを修得できるようなシロモノではなかった。
それに本だけではやはり限界がある。
工場自体もトヨタ式以前の状態だった。
結局、トヨタが歩んできた道を一から同じように通っていくしかない。
当然、TPSの組織なんかも何もない。本当に一からなのだ。
従って韓国のようにはいかず、全部私が資料作りからやらなければならない。
しかしそこで救われたのが、滞在期間が毎月2週間と驚異的に長いことだ。
これだけあれば自分でやるのに十分な時間だ。
①トヨタとの差の明確化
②その差は生産管理で埋めなければならないが、それを苦労してでもやれば、問題点が明確になるので、それを1つ1つつぶしていくような活動をしていく。
③それと並行して、機械配置を製品の流れに従って、運搬が多い機械と機械を近接させるようにしなければならない。
④そのために多数部品のピックアップをして、その部品の工程経路図を作成しなければならない。
⑤そして最後にレイアウト変更をする。
⑥またまたこれらと並行して、段取り改善に取り組み、日本では40年前に達成したシングル段取りまでこぎつけなければならない。
⑦現場改善のほかに、販売部門もインボルブして最終組立ラインの仕掛けの平準化も進めていかなければ、現場がいくら改善しても全くしょうがないことになってしまう。
このようなことを毎日絵つきの資料をつくって溶接工程のモデルラインのメンバーに説明していく。
うれしいことにそのメンバー等は十分理解してくれて「やろう!」という気になってくれたが、前工程、後工程がシーラカンスのままなのだ。
一度会議を開いたが「できない」「できない」のオンパレード。
確かにシーラカンスのままだから、できるわけがない。
そこで上記のような綿密な資料(シナリオ)を作り上げた。
このシナリオの通りやればできないわけがない。
旧正月明けに再度会議を開いて、天王山の機械加工工程から本格始動だ。
どんどん面白くなってくる。
しかしここまで自分でやらされると、トヨタ時代に遣り残してきたことがすべてできる感じで本当にいい。
いままでいろいろな改善の本を読んだが、読み散らかしたままだった。
そのポイントを中国人に知らせるため徹底的にエクセル化して、中国語に翻訳してもらう。
それを毎日17時からモデルラインのメンバーに説明する。
そして明日あたり、副社長に報告して理解してもらったら本格始動だ。