コミュニケーション
現場の飲み会は盛り上がりますか?
1.工場経営の本質は他人を通じて自分の想いを実現させることにある
現場の規模が20人を超え、50人、100人と小規模から中規模、中堅企業と成長するにしたがい、機能させるべきはチーム力です。属人的な仕事のやり方では達成できない水準の仕事ができます。
成長段階に至ると経営者も仕事のやり方を変えなければなりません。経営者が現場に直接関与しなくても、現場のひとりひとりが力いっぱい仕事をして成果につながる仕組みづくりが求められます。
20人以下程度であるなら、経営者の目が現場に隅々に行き届くので、経営者が自ら現場で采配しても全く問題はないです。
そうしたやり方で、仕事が早く回ります。仕事の規模が小さければこのやり方でも現場ひとりひとりの力を引き出すことも可能でしょう。
しかし、成長路線にのり、事業規模も大きくなると状況は変わります。経営者自らが実務に従事して成果を出す仕事のやり方は卒業です。
ボートを漕ぐのと、戦艦を指揮するのとでは仕事のやり方は当然に異なります。そこで、現場、個々の力を生かすのに焦点を当てるとき、考えるべきなのがチーム力です。
個の力を最大限に発揮させるのにチーム力が重要であるのは、先だっての冬季オリンピックやW杯サッカーにおける日本チームの活躍を見れば自明の理です。
また、「トヨタ生産方式」を著した大野耐一氏もチームの大切さを説いています。ですから、チームの要となる現場リーダーの役割が重要になってくるのです。
経営者の想いに共感して、現場を引張る右腕役の現場リーダーはいるでしょうか?
経営者は現場リーダーの役割をしっかり伝える必要があります。
現場リーダー本人が自覚していようとしていまいと、担当工程の雰囲気や活気の有無を決めているのは現場リーダーだからです。
現場に活気をもたらし、チーム力を最大化する役割を担うのが現場リーダーである、このことをまず自覚してもらう必要があります。
工場経営はこうした現場リーダーの力を生かすことにあるのです。
2.コミュニケーション
経営者は「組織の3要素」に働きかけることです。
活気をもたらし、チーム力の最大化を図るには、組織の3要素に注目します。
組織の3要素とは、
・共通の目的
・貢献意欲
・コミュニケーション
これら3つです。
アメリカの電話会社の社長にして経営学者であったチェスター・バーナード(1886-1961)が示した組織が成立するための条件です。
多様な解釈ができますが、弊社では現場に活気を生み出す3要素と考えています。
なかでもチーム力を高めるのに重視すべきはコミュニケーションです。
現場リーダーには、このコミュニケーションを通じて、他の2要素への働きかけをしてもらいます。
繰り返すようですが現場リーダーの最大の業務は経営者の想いを現場へ浸透させることです。
ベクトルは向きがそろって最大化します。
チームの要として現場へ直接に働きかけるのが現場リーダーであり、その働きかけの手段がコミュニケーションです。
ご指導先の現場でプロジェクトチームを立ち上げるとき、プロジェクトへ参加する現場リーダーや各工程のキーパーソンへお話しすることがあります。
コミュニケーションの重要性です。チームの一体化はフェイス ツー フェイスのコミュニケーションによってのみ達成されます。
そして、コミュニケーションにはフォーマルなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションの2種類あります。
フォーマルな(公式の)コミュニケーションとはいわゆる「会議」です。
昨今、大手では業務の効率化で会議の削減という考え方も提唱されているようですが、中小現場では現場リーダー主催の会議を重視したいです。
現場の活気が高まることもあります。
ある金属加工メーカーの現場でのことです。
工場長が現場リーダーを集めて新たな会議をやることにしました。
50人規模の現場で、現場リーダーが5名です。
当初、工場長は、集まっても話が続かないと語っていました。そうした懸念はありましたが、まずは会議をやってみたのです。
5名のリーダーを集めて、工場長が「今、各工程で問題になっていることを整理しよう。」と口火を切りました。
誰もが黙って会議にならなかったか……、全く逆でした。
現場リーダーたちは次々と考えを言葉にしていました。現場リーダー同士のやり取りもあったのです。
工場長は、当初、30分もかからないだろうと予測していましたが、結局、2時間を超える会議となりました。
これだけ活発な会議ができるならば、今後、定期的に予定に組み込んで継続しよう、ということになったのです。
「日頃、現場で話をしているので、現場リーダーもこれ以上話すことはないではと思い込んでいましたが、違っていましたね。会議という形で、しかるべき資料を準備したことをきっかけに意見を引き出せました。」
フォーマルなコミュニケーションが効果的な事例です。
当然、日ごろから意識して現場リーダーの声に耳を傾けていた工場長と現場リーダーとの間の信頼関係が前提にあります。
信頼関係を前提にすると、かえって“形式的な”仕事の場が機能したりするのです。
大手とは逆行するかもしれませんが、あえてフォーマルなコミュニケーションの場を設定してはどうでしょうか?
また、インフォーマルな(非公式の)コミュニケーションとは業務とは無関係な意思疎通の場です。
昨今、一時期廃れた社員旅行や社内運動会などが復活しつつあったりします。
また、今や死後になったかもしれませんが、飲みニケーションというのもあります。
こうした場でパーソナルな関係をつくり、腹を割った仕事の話ができる雰囲気を醸成するのです。
ご指導で訪問した現場の作業者からこんな話を聞いたことがあります。
「ウチのリーダーはお酒を飲むと饒舌になるんですよ。仕事の話はそこでの方が盛り上がりますね。」
その工程の現場リーダーは寡黙な方です。
いわゆる職人気質という感じの方ですが、決して自分の作業にのみ固執していません。
仕事全体の流れを読みながら現場を操っています。
冗談を言ったりすることは少ないですが、仕事を誠実にこなしています。
外部の話にも耳を傾けようとする姿に、当方もその気にさせられる、そんな方です。
そうした方がお酒の場では部下へ饒舌に仕事を語る……、なんか愉快な気持ちになりませんか。
裏話を紹介してくれた現場の作業者もニコニコ顔でした。
問うまでもなく、この企業の現場のベクトルはそろっています。インフォーマルな(非公式の)コミュニケーションはパーソナルな関係を構築するのに役に立つのです。
3.チーム力を強化する
組織とは人の集まりであり、人が集まってこそ発揮できることがあります。
チーム力、連帯力、火事場の馬鹿力、一体感……。
これらを強化する手段がコミュニケーションです。フォーマルとインフォーマルの2種類あります。
現場リーダーがフォーマルなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションを使いこなせるようにするのは経営者の仕事です。
少数精鋭で筋肉質の職場づくりのキモとなるチーム力、連携力は、フェイス ツー フェイスのコミュニケーション抜きに強化されません。
フォーマルなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションを設計しませんか?
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