コア技術の独自性は地域NO.1から始めて世界へ…

コア技術の独自性は地域NO.1から始めて世界へ…

グローバルや日本国内で独自性がなくても、地域で個性を発揮することを考える。ローカルなコア技術、強みにも注目する、という話です。

 

1.5年先、10年先の姿を描くために必要な視点

現場の目指すべき姿を描くことは見通しを立てる上では絶対に欠かせません。

将来の技術動向や市場動向が読み難く、これだけ不確実性が高まっている経営環境の中で、「見通し」を立てずにモノづくり事業をするのは、懐中電灯を持たずに洞窟に入ったり、羅針盤を持たずに航海へ出ることに等しく、心もとないこと、この上ないです。

現場が将来に対して明るい見通しを持つことが、持続するやる気を引き出す原動力となります。

 

さて、5年先、10年先の姿を描くために必要な視点は何でしょうか……。

それは、……自社の強みです。コア技術です。

コア技術は、市場に働きかける手段であり、工場で生み出した付加価値をお金に変換する手段であるからです。

5年秋、10年先の姿を描く前に自社の強み、コア技術を把握しておきます。

 

2.コア技術の独自性

市場に働きかける手段がコア技術です。

自社のコア技術が市場において、どの程度独自性や差別化を発揮できているかが優位性と関係してきます。

 

独自性があれば市場への影響度が大きく、有利な商売ができ、独自性が乏しけば、「その他大勢」と十把一絡げにされて価格競争に陥る……。

働きかける市場でのコア技術の独自性や差別化がポイントであり、その市場は昨今、グローバル化が進んでいます。

だからと言って、コア技術で働きかける市場は、いつも世界を対象に考えねばならないわけではありません。

グローバル(世界)な市場もあれば、ドメスティック(国内)な市場もある。さらには、ローカル(地域)な市場もあります。

ですから、地域に根差した中小製造企業では、コア技術の独自性や差別化を地域に絞って発揮する戦略も考えられます。

 

下図では横軸にコア技術の独自性や差別化の要因の有無を、また縦軸は働きかける市場を世界と地域に分け、コア技術を分類しています。

大きくコア技術を4つに分類しています。

 

1)ケース1:理想の姿(実現はかなり難しい……)

ケース1はコア技術がDゾーン、つまりグローバルに独自性を発揮していること示しています。

コア技術の独自性は地域NO.1から始めて世界へ_01

モノづくり企業として目指したい理想の姿です。

理想の姿ではありますが、ここまで徹底的に「強い」コア技術は、なかなか存在しないというのが現実だと思います。

純粋な技術競争では後続のキャッチアップも迅速で技術的な優位性を保つのは容易ではありません。

それだけ多様な情報が入手しやすくなり、競合の開発力自体の水準も上がっているからです。

 

コア技術の強みを世界規模で持続できる事業形態として、プラットフォームを構築する事業が挙げられます。

世界規模で強みを発揮し続けることを可能にする数少ない事業形態であると、しばしば説明されています。

マイクロソフト、インテル、アマゾン、フェスブックなどですね。

 

ケース1が理想ではありますが、まぁ、これはかなり壁が高い。

 

2)ケース2:これは早期に脱却したい姿

ケース2は、ケース1とは真逆で、競争力に乏しく、これで事業を継続できるとしたら完全な下請けしかないパターンです。

地域においてもコア技術に独自性や差別化要因がほとんどないAゾーンの場合です。

コア技術の独自性は地域NO.1から始めて世界へ_02

依頼先から言われた通りに対応するのみ。受注があるのは、「たまたま」近くに立地しているからだけ。

現状の経営環境が継続されれば、なんとか食べていくことは可能ですが。

依頼元の移転、競合の新規参入などの外部環境の変化があるともろにダメージを受けることは必至です。

自らコントロールできない、ストレスを感じる事業展開となります。

これは早期に脱したいです。

 

3)ケース3:地域に根差した中小製造業は、まずこれ目指す

グローバルや日本国内の視点で判断した時、コア技術自体の独自性が乏しく、差別化要因も見当たらないですが、事業は立派に地域で展開されているケースです。

地域に立脚した事業展開によって、その地域限定では独自性や差別化が発揮され、地域での競争優位が確立されています。

BゾーンかつCゾーンの場合です。

コア技術の独自性は地域NO.1から始めて世界へ_03

 

以前、お世話になった、次のような企業がありました。

そこは10数名の従業員を抱えた、機械加工を中心に簡単な治工具を製作する会社でした。

小さいながら赤字も出さず、地域に密着した事業を展開していました。

その企業の設備がすごいとか、特別に腕のイイ職人がいたというわけではありません。

治工具を製作するという点では、近隣にも同様な企業がありました。

ですから、それ自体で強みが発揮されることはありません。

 

その企業の強みは、経営者の方が、とにかく足繁く客先の現場を回り、現場での困り事を見つけては新たな治工具を提案していたことです。

製造現場を対象にした治工具類の御用聞きに徹していたことです。

御用聞きも極めれば強力な武器になることをその企業は示していました。

「ウチはこれしかありませんから。」と語っていた経営者の方の言葉を、今さらのように思い出します。

 

自社の強みをどこに置くべきか、その経営者の方は自覚していたと思います。

社長がほとんど社外に出ているわけですから、工場での仕切り役は別にいたと思われますし、小規模ながら仕組みづくりはやられていたと推測されます。

社長が御用聞きに徹することを可能にした社内体制が、その企業のコア技術だった……、そのように考えられます。

 

地域に根差したモノづくり企業では、その地域で発揮できる独自性や差別化を考えてみたいです。

ローカルに個性を発揮している身近な事例が意外と多いです。

引っ越し屋さん、コンビニ、歯医者、美容院、介護施設、ふと近所を見回した時に「近所で評判の」という冠をつけて紹介される店や業者があることに気付きます。

 

自社の強みを分析してコア技術を把握する時、グローバルや日本国内という広い市場のみではなく、地域という市場での強みにも焦点を当てます。

地域のNO.1を目指すことで、地域に立地している必然性も明確になってくるでしょう。

現時点で、特に下請け型の事業を展開しているモノづくり現場ならば、新たな事業展開を考える時の切り口になるはずです。

 

コア技術を的確に把握した上で、5年先、10年先の姿を描きます。

地域のNO.1を目指し、さらに地域を飛び出して、日本国内、世界へ進出する夢を描きませんか?

 

まとめ。

グローバルや日本国内で独自性がなくても、地域で個性を発揮することを考える。ローカルなコア技術、強みにも注目する。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)