コア技術で海外取引先を拡大できた菊池歯車

コア技術で海外取引先を拡大できた菊池歯車

貴社では事業の成長拡大でコア技術を生かしていますか?

1.菊池歯車株式会社のコア技術

菊池歯車株式会社は栃木県足利市に本社を置く歯車メーカーです。

主に自動車や建設機械の歯車を生産しています。

創業は1940年、資本金3,000万円、従業員数126名。

2015年6月期売上高は31億円です。

 

菊池歯車は、2016年3月末、新たな工場を完成させています。

足利市郊外の敷地面積1万平方メートルの土地へ20億円投資しました。

今後3年間でさらに投資を継続するとのこと。

投資総額は年間売り上げに匹敵する規模になる見通しです。

 

この挑戦的な設備投資に踏み切った背景には、大きな契約を獲得したことがあります。

航空機エンジン大手の仏スネクマ社からの受注です。

同社へタービンブレードを供給することになりました。

ホーイング「737MAX」やエアバス「A320NEO」向けの次世代エンジンの部品となります。

 

さて、このタービンブレードには軽量と強度を兼ね備えたチタンアルミ合金が使われています。

そして、チタン合金は難切削材料として知られています。

 

軽いですが強度が強く刃先に大きな力がかかるのでチップが摩耗しやすい材料です。

また、回転体に刃を当てるとビビリが発生しやすいので精度が出にくい問題点があります。

ヤング率(応力/ひずみ)が小さいために変形しやすいからです。

また、熱伝導率が低いのでチップや切粉に熱がたまりやすく摩耗や焼き付きを助長します。

 

こうした多くの技術課題を抱えた材料です。

菊池歯車は、独自の工具開発など通じて4年で解決し、量産に目途を付けました。

難切削材のタービンブレードの量産に目途をつけられたのは、本業の歯車の設計開発力、製造力の高さのお陰です。

 

日頃、自動車メーカーからの求められるギアの公差は0.001mmレベルです。

つまり1μmレベルの仕事です。

こうした精度を実現させるモノづくり力があったから航空機エンジン大手の仏スネクマ社の受注が可能でした。

 

歯車に経営資源を集中させ、歯車を加工する精密加工技術を磨き続けてきました。

 

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例えば歯車のブランクにギアの歯を切り出すボブ加工技術は同社のコア技術です。

 

社員のうち50名超が一級技能士の国家資格を持ち、ボブ作業に携わるのは40名です。

菊池義典社長は「国内の企業で最も多いのでは」と話しています。

(出典:日本経済新聞2016年6月6日)

 

タービンブレードと歯車では、製品こそ違いますが、「突起形状、フィン形状」という共通点から、歯車での製造技術がタービンブレードに応用できました。

コア技術が事業拡大に寄与しています。

 

2.管理技術にも注目

菊池歯車の強みは多品種へ対応できる点にもあります。

特注だけでも1年間に250社から5,000種類もの依頼を受けているのです。

 

多品種少量の特注生産は、しっかりした管理技術がなければ成立しません。

担当者別にバラバラで動いていたのでは、ムダが生じて利益は出ません。

 

同社のHPによれば、NCボブ盤が31台、汎用ボブ盤が44台、円筒研磨機が24台、シェービング盤が21台……と多数の加工設備が稼働しています。

生産管理の仕組みがなければ、利益を生み出す効率的な生産活動は成り立ちません。

 

「どの装置にどんな指示を出すかがノウハウ」と菊池社長は説明しています。

こうした管理技術もコア技術になることに注目です。

 

工場独自の生産管理体制は競合にはわからないブラックボックスの強みになります。

チームワークの要素が含めば含む程に、その強みは発揮されるでしょう。

その結果、外からその強みの源泉が見えづらくなります。

 

一方で、担当者任せになっている工場ではチームワークを発揮する余地がありません。

担当者間の重複作業も発生し、無駄が散在するので利益率も頭打ちです。

 

現場では管理技術にも注目です。

儲かる工場経営では、意外なところが強みになっていることがあります。

自社工場では、当たり前にできているので、強みであるとの自覚がないからです。

 

ただし、そこに気が付けば、その管理技術を意識して磨くことが可能になります。

自社工場で強みになっている管理技術を見定めることも大切です。

 

3.技術力に裏付けされた積極的な拡販活動

同社は以前から航空機部品を少量手掛けていました。

取引拡大を目的に、2010年から海外の航空ショーに出展し始めめたとのことです。

 

その結果、仏スネクマ社から試作品の製作を依頼されたという経緯があります。

「どこにチャンスがあるか分からないので、難しい仕事も原則受ける。」

(出典:日本経済新聞2016年6月6日)

 

技術力に自信がないと言い切ることができません。

技術力の裏付けがあったから、社長は積極的に動けました。

その結果、海外での取引拡大を実現させたのです。

 

現場のモチベーションも上がることでしょう。

さらに、足利郊外に新設工場の稼働に合わせて40人程度の新規の雇用も計画しています。

地元経済への貢献も大きいです。

 

自社も発展し、地域にも貢献できます。

菊池歯車の事例で、コア技術の大切さをあらためて実感できます。

 

  • コア技術には固有技術と管理技術があり、強みを生かすために経営資源をそこへ集中させる。
  • コア技術を極めれば応用できる分野へ、低いリスクで挑戦できる。

 

自社のコア技術をしっかり把握します。

 

貴社のコア技術を見極めて、事業拡大に生かしませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)