カイゼンとイノベーションを連携させる
イノベーションのみの取り組みでは技術水準が劣化することに、貴社はお気付きでしょうか?
1. イノベーション
付加価値を創出、拡大させにはイノベーションが必要です。
イノベーションは飛躍的です。
従来業務の延長線上には、イノベーションはありません。
また、技術開発だけがイノベーションの対象ではありません。
管理技術や仕組み等もイノベーションの対象です。
貴社にとって新たな挑戦となるならばすべてイノベーションです。
ただ、モノづくりに携わっているなら、新技術や新製品の開発にこだわりたくなりませんか?
私たちは、自らの手で、モノに付加価値を加える機会がある製造業で汗をかいています。
この点が、小売業やサービス業とは違っているのです。
世の中に必要とされるモノを生み出すことができた時の達成感や充実感を思い浮かべて下さい。
それに加えて、一緒に頑張った仲間達との一体感も感じてみて下さい。
何物にも代えがたやりがいを感じませんか? 技術者冥利につきます。
モノづくりの現場で仕事をして、仲間と、こうして頑張っている技術者や技能者の方が大勢いるのです。
かっての伊藤もそうでした。
こうした経験を大切にして、イノベーションへの動機づけにしたいものです。
イノベーションは、付加価値創出の原動力であるとともに、現場のモチベーションを高める役割も果たしています。
2. イノベーションのみでは持続的な優位性は得られない
一般的に、技術開発や製品開発のイノベーションには設備投資が伴います。
多くのメンバーの知恵を集め、設備が実現されるのです。
規模の大小はありますが、新たな固有技術を備えた設備です。こうした設備で、新たな価値を顧客へ届けます。
新たな価値を生み出すレベルの技術開発がイノベーションです。
ですから、付加価値を一気に拡大させる威力があります。
下図はイノベーションによる成果の出方を模式的に示した図です。
(出典:『カイゼン』今井正明)
横軸は時間、縦軸が得られた成果や付加価値です。
上向きの赤矢印が、イノベーションで獲得した付加価値を示します。
3回のイノベーションで、hの付加価値を獲得できました。
短時間に、矢印の長さ分だけ付加価値が拡大しています。
短時間で一気に、効果が得られるのが特徴です。
ただし、これは理想的なイノベーションです。現実的には、下図のようになると考えられます。
(出典:『カイゼン』今井正明)
上図との違いは、イノベーション後の付加価値の挙動です。
一旦完成された設備は、稼働した瞬間から劣化が始まります。
経理でいうところの原価償却が始まります。さらに、技術水準が、相対的に下がり始めます。
どんなに優れた技術であっても、世に出た瞬間から、競合は動きます。それを上回る技術を目指した取り組みが展開されるのです。
ですから、イノベーション後、その技術になんら手を加えなければ、技術水準は相対的に下がるだけとなります。
つまりイノベーションのみで、持続的な優位性を維持することは難しいのです。
理想的なイノベーションと同じhだけの付加価値を目指そうとしたら、実際には、劣化分の機能を加えたイノベーション(赤太矢印)が必要になります。
設備投資して新たな設備を導入したから、当面ウチは安泰だと考える経営者がいたら、考え方を改める必要があるのです。
上図を改めて眺めて下さい。設備投資したその瞬間から、劣化が始まっています。
設備投資では、イノベーションの後の対応が大切です
3. カイゼンとイノベーションの相乗効果
下図は、イノベーションをカイゼンを組み合わせた時の付加価値の変化です。
(出典:『カイゼン』今井正明)
カイゼンでは、時間をかけて、少しづつ地道に成果を積み上げます。
時間を味方につけてノウハウの蓄積を図ります。
その結果、次回イノベーションの時には、前回イノベーション時と比べて、すでに技術水準が向上しています。
これは、次回イノベーションを受け入る現場体制が整っていることも意味します。
次回イノベーションに向けて現場のポテンシャルが向上した状態です。
また、カイゼンは、別の見方をすると作業の標準化です。イノベーションの後に何も手を加えないと相対的に技術水準は劣化します。
そこで、作業の標準化を図って設備劣化と技術水準劣化の両者を補うのです。
カイゼンで継続的に標準作業を見直し、技術水準の漸進的な向上を図ることができます。
イノベーションほどの劇的な効果はないですが、漸進的に水準を上げることが可能です。
現場の知恵と工夫で、設備投資も不要です。
これがカイゼンの本質となります。
このように考えると、カイゼンとイノベーションは付加価値創出の両輪です。
片方だけで回しても、それはそれなりに効果があります。
ただ、両輪で機能させると、相乗効果を生みます。
特に人的経営資源へ、良い効果を生み出します。技術者と技能者の一体感が生まれるのです。
カイゼンは、イノベーションと連携させると、相乗効果も生まれ、効果が大きくなります。
カイゼンを単独で展開するよりも、現場の動機付けは高まるのです。
- 今回イノベーション(設備投資)の効果を最大化するためのカイゼン
- 次回イノベーション(設備投資)の準備のためのカイゼン
イノベーションと連携させたカイゼンの視点はこの2つです。
どちらのカイゼンも、目的、狙いがハッキリします。
成果も客観的、定量的に評価できます。
全社でも注目されるイノベーション(設備投資)に関連した仕事でもあるのです。
目指している成果の波及効果が大きいことも実感できます。
つまり、現場は働きがいを感じ、やる気も引き出されやすいのです。
イノベーションと連携させるため、経営者が戦略的にカイゼンテーマを決めます。
テーマ選定が現場丸投げではありません。
経営者の意思が、カイゼンテーマ自体にこめられます。
経営者の想いが込められたテーマです。
現場が仕事のやりがいを感じないわけがありません。
現場丸投げで、現場が独自に決めたテーマの重み、やりがいと比較して下さい。
イノベーション ⇒ カイゼン ⇒ イノベーション ⇒ カイゼン ⇒
5年先、10年先を見据えた技術開発ロードマップの視点を与えてくれます。
カイゼンとイノベーションを組み合わせた、下記のイメージで5年先、10年先を見通して下さい。
多くの工場では「カイゼンは現場」、「イノベーションは事務所スタッフ」という雰囲気です。
これはとても、もったいないことです。
制約条件が多い中小では、技術開発を進めるときにこそ、全社が一体化する必要があります。少ない貴重な経営資源を効率的に生かすのです。
現場がイノベーションを、事務スタッフがカイゼンに興味を持ちます。
技術開発で一体感が醸成されます。
時間を味方につけた取り組みです。
当社のコンサルティングメニュー、10年ロードマップ戦略プログラムは、工場経営全体を同様な視点で進めるものです。
次世代を担う若手人財に活躍してもらうため、時間を味方につけてます。
カイゼンとイノベーションを連携させる仕組みをいっしょにつくりませんか?