ウェアラブル・エレクトロニクス業界は既存の設計プラットフォームにより制約を受けているのか?
ウェアラブル端末に大きな期待が寄せられていることは明らかであり、私たちはその普及を日々の生活の中で既に目にし始めており、この業界は少なくともある程度、初期段階を抜け出しつつあります。
アナリスト企業であるScalar Market Researchが先月公開した報告書によると、ウェアラブル端末の出荷額は、現在299億ドルであり、今後5年間に18.9%の年複利成長率(CAGR)を達成し、2021年には712億ドルに達すると期待されています。
その大部分は、スマートウォッチとフィットネストラッカーが占めることになると見られています。
ウェアラブル端末は、原理的には多くのさまざまな形を取ることができますが、共通する中核的な属性があります。
ウェアラブル設計プロジェクトに従事する技術チームにとって、次の点は仕事の土台とする指針として役に立つでしょう。
1. ウェアラブル端末にとって低電力の動作は実用的観点から必須です。
したがって、これは開発プロセスのあらゆる要素で反映させる必要があります。
製品のバッテリ消費量が多いとユーザーにとって不便であり、それを身に付けようという気持ちが薄れるでしょう。また、バッテリ残量を正確に測定してユーザーに伝える必要もあります。
2. 前述の1番めのポイントに基づき、ワイヤレス充電機能を備えることは確実に価値になります。
これによりウェアラブル端末は、充電の機会が生まれるごとにエネルギーを補充できます。
3. デザインの中心部には、多くの機能をサポートし、バッテリを消費しすぎることなく優れた性能を実現できる、パワー効率の良いプロセッサが必要です。
4. ユーザーが何らかの形で端末を身に着けることを考えると、おしゃれな軽量構造は、大きな魅力となると思われます。というのは、それにより身に着ける快適さが増すからです。
5. ワイヤレス接続はウェアラブル端末にとって必須機能です(データやマルチメディア・コンテンツを送受信するためです)。
これは既に述べた理由により、バッテリで動作するために最適化する必要があります。
その結果、BLE(Bluetooth Low Energy)は人気の高い接続オプションであることが証明されつつあります。
6. データを参照したり(トレーニング実績の統計など)、機能をコントロールするために、電力効率の良いマンマシン・インタフェース(HMI)も必要となると思われます。
どのくらい精巧なHMIが必要かは、ウェアラブル端末の設計が目指しているアプリケーションの性質により決まります。
7. 関連するデータを取得するために、標準的にさまざまなセンサ群を組み込む必要があります。
できればMEMSベースのセンサ技術が望ましいです。というのは、このアプローチによりバッテリ消費を節約することができ(この種のデバイスは消費電力が少ないため)、より簡素なウェアラブル設計を実現できるからです(コンパクトサイズであるため)。
現在、この業界の多くの部分は大手企業により占有されていますが、それが成熟するにつれ、小規模な製品メーカーがウェアラブル端末の潜在性を利用できるチャンスが増えるのも確実です。
しかし、このような企業が必要とするサポートのレベルは非常に異なります。
大規模なメーカーは、自由に使える技術力をはるかに多く所有しています。その結果、ウェアラブル設計をゼロから構築できます。
小規模なメーカーはそのような贅沢はできません。したがって、幸先の良いスタートを切って、差別化された製品を素早く、しかも多大な技術投資に依存することなく商品化できるような開発ソリューションを活用する必要があります。
オン・セミコンダクターは、さまざまなエレクトロニクス分野における専門知識を有しており、ウェアラブル端末に関わる多様な需要に対応できる体制を整えています。
当社の新しいウェアラブル開発キット(WDK1.0)は、より包括的な開発プラットフォームを求める小規模なメーカーのニーズへ直接応えます。
WDK1.0は、EclipseベースのIDEと併せて、先ほど述べたあらゆる主要な要素を含む拡張性が高い多面的なプラットフォームを提供します。
それにより高度なウェアラブル製品の開発が可能です。
この設計リソースには、32ビットARM® Cortex™プロセッシング・コアおよびBLEに適した2.4GHzトランシーバを備えたnRF52832マルチプロトコルのシステムオンチップ(SoC)が組み込まれています(この周波数のさまざまなワイヤレスプロトコルもサポートしています)。
NCP1855充電器IC、LC709203F燃料計IC、AirFuel互換ワイヤレス充電用のフロントエンド・コントローラ、そしてスマートウォッチのための電力要件および追加開発要件をサポートするために、5個のLDOと1個のDC-DCを備えた高性能のプログラム可能なパワーマネジメントICであるNCP6915を搭載しています。
また、多次元の動作追跡のために3軸のジャイロスコープと3軸の加速度計で構成されるMEMSベースのFIS1100慣性測定装置も備えています。
さらに、組み込み式の温度センサと触覚フィードバックのためのLC898301ドライバICも含まれています。
便利なSmartApp(Android PlayStoreおよびAppleStoreから直接ダウンロードできます)を使用して、HMIをWDK1.0の解像度128×128のTFTディスプレイ(タッチ機能付き)へ簡単に組み込むことができます。
プロジェクト・ウィザードには、役に立つプロジェクト例が含まれており、これを利用することによりウェアラブル開発を迅速化できます。
出典:『ウェアラブル・エレクトロニクス業界は既存の設計プラットフォームにより制約を受けているのか?』オン・セミコンダクター