なぜ改善が必要か?

なぜ改善が必要か?

1.世の中の変化は止まらないから。

世の中の変化は止まらないどころかスピードアップしています。江戸時代であれば、交通手段や情報交換の手段などはほとんど変化がありませんでしたから、もし何か分からないことがあったら村の長老に聞くのが一番だったでしょう。経験が長い分、一番たくさん知っていますから。

ところが、今の時代は去年に無かったモノが今年生まれ、今無いモノが来年には有るといった状況です。長老の過去の知識では役に立ちません。

今はこれまでにあったモノが不要になり、新しいモノに取って代わられることが多いので、ボーッとしていると置いていかれます。そうなると会社がつぶれてしまうので、最低でも世の中の変化と同じスピードで自分自身が変わらなければなりません。そしてその手段の一つが改善なのです。

2.モノづくりにかかわることで変えられないことはないから。

現場で改善提案をすると、即座に「できません」、「無理です」といった答えが返ってくることがあります。しかし私は絶対にできないことを提案することはありません。ではどうしてできないと言うのでしょうか?

それはその人にとって、「自分一人ではできない」、「今すぐにはできない」、「完全にはできない」といったことを「できません」と言っているだけということです。

すなわち、みんなで計画的に一歩一歩変えていけばいいのです。すべてのことは変えることができます。そしてその手段が改善です。

3.人を育てるから。

企業が強いかどうかは、そこで働く人が強いかどうか、すなわち明るくて元気があって、勇気があってリーダーシップがあるような人がいるかで決まるでしょう。

人が育つための手段としては、学校に通うといったことが思い浮かぶと思います。しかし本当に自分たちのことをどう変えるかとなると学校では教えてくれませんし、元気や勇気は学校で身に付くモノでもありません。

そこで全員にひと月に最低一件は改善を実行してもらうことをお願いしてみます。どんな小さなことでもマネでもいいですから改善してもらうことにします。実行されれば必ず成果が上がります。それをコツコツと一年間続けると、大きな成果が出ていることが分かります。それを自分の力で実行したのですから、明らかに成長したといえるでしょう。

もしそれを社長の前で発表したとするとその瞬間は発表者が先生で社長が生徒です。これも成長の証拠でしょう。そしてその場で社長からほめられれば会社の中で自分の居場所が生まれるのです。

こうしてほめられることを通じて求める人材が育つのです。これからもずっと改善をして会社経営に貢献してくれるでしょう。

4.経営を変えるから。

世の中がこれからどう変わるかは分かりません。しかしたとえ世の中がどう変わってもみんなが改善で対応してくれるので大丈夫な状態を作ることができればそれは大きな会社の力となります。

一つひとつの改善は小さくても「みんながずっと」会社を変え続けることで経営を更に確かなものへと変えるのです。これが改善です。


◎現場改善No.1コンサルタント。大手自動車メーカーにて、一貫して生産効率改善(IE)を担当し、その改善手腕を見込まれて、社命にてスタンフォード大学大学院に留学。帰国後、若くしてIE責任者として、全国の主力工場を指導、抜群の成績をあげる。 ◎現在、 柿内幸夫技術士事務所の所長 として、自動車、家電、食品、IT関連メーカーなどを指導。「現場で、全社員が一緒に改善する実勢指導」という独自のノウハウで、社長・工場長はもとより、現場の人たちから絶大な信頼をよせられる。中小企業のドロ臭さと、最新鋭の工場ラインの双方を熟知した手腕に、国内だけでなく欧米、中国、アジアの工場の指導に東奔西走する毎日である。 ◎1951年東京生まれ。東京工業大学工学部経営工学科卒業、スタンフォード大学修士課程修了、慶応大学にて工学博士号取得。 ◎著書「最強のモノづくり」(御沓佳美 共著)「“KZ法”工場改善」「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「5Sでつくる高収益工場ビデオ」「図解でわかる生産の実務 現場改善」「現場改善入門」「現場の問題解決マニュアル」他多数。平成16年日本経営工学会経営システム賞受賞。工学博士、技術士(経営工学)。