なぜなぜ分析で問題の本質を知る

なぜなぜ分析で問題の本質を知る

問題の本質を究明するために、現場では、考える訓練をやっていますか?

1.科学的、工学的な因果関係を説明する

IoTで工場内を「つなげる」前にやるべきことがあります。

固有技術や管理技術を分析することです。

現場で展開されているモノづくりの工学的な因果関係を明確にします。

 

IoTはあくまで道具です。

何をどうするかというモノづくりの本質は固有技術や管理技術の方にあります。

IoTで工場をつなげる前にやらねばならないこと

 

モノづくりで、ベテランの勘や経験が欠かせないのはなぜでしょう。

それは、現場で起きている現象を、全て科学的に、工学的に説明できていないからです。

 

モノづくりのプロセスは、

複数の要因が複雑に

絡み合っていることが多く、

それらを分解して明快に説明するのが難しい場合もあります。

すると、ベテランの五感に頼らざるを得ません。

 

しかしながら、モノづくりは科学です。

科学である以上、必ず因果関係があります。

だから、現場で起きている現象の因果関係を、科学的、工学的に説明できる状態を目指すのです。

 

私は、現場で、長年、

製造技術のエンジニアをやりましたが、

仕事の中心は、現場で発生した「現象」の因果関係を解き明かすことでした。

 

そうして、不良品が発生する原因、新技術開発の手がかりが得るのです。

現地、現物、現実の三現主義が基本でした。

 

科学的、工学的な因果関係を解き明かすのに必要なことが2つあります。

 

ひとつは、科学的、工学的な知識です。

知識がなければ、考えることができません。

これは学習を通じて学ぶことができます。

最新の技術情報に常に触れ、貪欲に知識の土台のすそ野を広げます。

 

そして、もうひとつは、考える訓練です。

頭をフル回転させるやり方も知らなければできません。

考えることは後天的な能力です。

現象と知識を参照しながら頭を絞る能力も高める必要があると感じています。

 

2.大野耐一氏のなぜなぜ分析

トヨタ生産方式のなぜを5回繰り返す方法は有名です。

大野耐一氏が、その著作の中で語っています。

一つの事象に対して、5回の「なぜ」をぶつけてみたことはあるだろうか。

言うはやさしいが、行うは難しいことである。

たとえば、機会が動かなくなったと仮定しよう。

(1)「なぜ機械は止まったか」

オーバーロードがかかって、ヒューズがきれたからだ。

(2)「なぜオーバーロードがかかったのか」

軸受部の潤滑が十分でないからだ。

(3)「なぜ十分に潤滑しないのか」

潤滑ポンプが十分に組み上げていないからだ。

(4)「なぜ十分くみ上げないのか」

ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ。

(5)「なぜ摩耗したのか」

ストレーナーがついていないので、切粉が入ったからだ。

以上、

5回の「なぜ」を繰り返すことによって、

ストレーナーを取り付けるという対策を発見できたのである。

(中略)

5回の「なぜ」を

自問自答することによって、

ものごとの因果関係とか、

その裏にひそむ本当の原因を突きとめることができる。

(出典:トヨタ式生産方式 大野耐一)

モノを深く考えるとは、大野氏の言うなぜを繰り返すことに他なりません。

目前の出来事に引っ張られると、本質を見誤ることがあります。

そうした事態を避けるのです。

 

5回の「なぜ」を自問自答するのは方法論であり、スキルです。

したがって、訓練で習得できます。

5段階のフレームを表記したシートで

「なぜなぜ分析」を訓練するのは効果的です。

 

トラブル対策書のフォーマットが「なぜなぜ分析」に沿っているケースも多いです。

 

科学的、工学的な知識を活用して、

深く考えることが習慣になっている仲間が、

多ければ多い程、

相乗効果も相まって現場力は向上します。

 

その結果、

自社の固有技術や管理技術への理解も深まり

現場で発生する現象の因果関係を的確に解明することができるようになるのです。

 

この状態に至れば、

 

自社のコア技術の水準が相対化され、

次に何を目指すべきか、見えてくることでしょう

 

3.行き着くところは本質的な問題である

現場で「なぜなぜ分析」を繰り返し繰り返し訓練します。

 

小さな問題でも、なぜ、なぜと、あえて深く考えるのです。

 

問題には、複雑に絡み合った原因があることを理解できます。

本質的な問題の存在に気付くことが、なぜなぜ分析の狙いです。

 

行き着いたところは、

科学的、工学的な問題ではなく、

組織的な問題であった、ということもあるでしょう。

 

標準がないこと、

仕組みがないこと、

フォローと評価がないこと、

見通しが共有されていないこと、

外部の力を活用しようとしていないこと・・・・・。

本質的な問題を、現場と共有できれば、事業のステージアップをしやすい状況になります。

 

科学的、工学的な因果関係を究明するのに必要なのは、

・知識

・考える訓練

深く考えることを習得します。

 

科学的、工学的な知識や習得し、考える訓練をする仕組みをつくりませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)