これからの技能と技術【1】
その昔は電子計算機と呼ばれ「高速ソロバン」であったコンピューターですが、この頃は進化して人工知能(A.I.)レベルになって、人間の仕事を奪うかもしれない……といった議論も出ています。
私も次々と新しい情報が入る中でこれから一体どうなっていくのだろうと期待したり心配したりを繰り返しておりました。
その中で、先日私の指導先のB社でそのことに関する素晴らしい改善に出会いました。
B社ではプレス金型を作っているのですが、最近はプレスされる金属の性能がより軽くより強くなっており、スプリングバックというのですが、せっかく曲げてもまたもとに戻ってしまいやすくなっているのです。
その結果、金型設計も複雑で難しくなっています。
そこでB社ではスプリングバックなどの複雑な変化をシミュレーションできるソフトを購入しました。
ここまでは特別なことではないのですが、B社ではコンピューターは苦手といっていた60歳のS工場長が、若い人に教わりながら勉強してこのソフトを使えるようになったのです。
ものすごい経験と技能を持っているS工場長がものすごい技術のソフトを使いこなせるようになると何が起きるのか? S工場長に聞いてみました。
すると、
「いやー、このソフトはすごいね、今まで何度も行ったり来たりしていた作業が一発だよ! おかげで生産能力は上がるし若手とのコミュニケーションは進むし……秘密だけど今度●●●●にチャレンジするんだ、こんなこと普通考えられないだろ!」
技能を自動化するのではなく、自動化を使って技能をさらに上げるということです。コンピューターはやはり使うものであって使われるものではないと考えるのだと改めて思いました。