これからの変化の時代に向けてのカイゼン【19】

これからの変化の時代に向けてのカイゼン【19】

今回は『儲かるメーカー 改善の急所101項』【急所39】の解説です。

【急所39】問題は、見えるようにした時点で八割解決する。(1)

 

見えるということはとても大切なことです。

見えると分かります。

分かればできます。

この「見える→分かる→できる」のサイクルがうまく回ると改善がものすごくスムーズにスピーディに進みます。

 

ただここでいう「見える」が一筋縄でいかないのです。

 

私は若いころ、ある日本を代表する大会社のS会長から

「柿内君、君はボルトが自然に緩む瞬間を見たことがあるかね?」

と聞かれたことがありました。

人がボルトを緩めるのはもちろん見たことはありますが、誰も触らないのにボルトが目の前で自然に緩むところなんか見えるわけがありません。

質問の意味が分からず「ないですね~」などと情けない返事をしたのです。

 

するとS会長は続けて、

「そうだろう。先日うちの会社の製品のボルトが使用中に緩んだというクレームがあって、

技術者が喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしていたんだが、

誰その瞬間を見ていないもんだから話がなかなか終わらなかったんだ。

その瞬間を見ることができたら一瞬で答えが出るはずなんだけどね……。」

とのことでした。

 

私たちの身の回りには結果のデータはあるけれどその過程を誰も見ていないということはたくさんあります。

ただ想像でいろいろ話をしているのでは間違ったり、不必要に時間がかかったりするものです。

 

不良発生のデータのほとんどは結果のデータです。

誰も発生の瞬間を見ていません。

そこに気付いて状況を見えるようにしただけで大きな問題が解決したという事例はたくさんあります。

 

技術の進歩で以前よりずっとモノは見えるようになっています。

昔の8ミリ映写機の時代から考えると、スマホで簡単に撮影してすぐにプロジェクターで映写できる今の状況はものすごい進歩です。

これ以外にも昔では不可能だったことが今は簡単にできるようになっていることがたくさんあります。

 

すぐに現場に行って見えていないモノを探して見えるようにしてください。

これからの変化の時代に向けてのカイゼン【19】

◎現場改善No.1コンサルタント。大手自動車メーカーにて、一貫して生産効率改善(IE)を担当し、その改善手腕を見込まれて、社命にてスタンフォード大学大学院に留学。帰国後、若くしてIE責任者として、全国の主力工場を指導、抜群の成績をあげる。 ◎現在、 柿内幸夫技術士事務所の所長 として、自動車、家電、食品、IT関連メーカーなどを指導。「現場で、全社員が一緒に改善する実勢指導」という独自のノウハウで、社長・工場長はもとより、現場の人たちから絶大な信頼をよせられる。中小企業のドロ臭さと、最新鋭の工場ラインの双方を熟知した手腕に、国内だけでなく欧米、中国、アジアの工場の指導に東奔西走する毎日である。 ◎1951年東京生まれ。東京工業大学工学部経営工学科卒業、スタンフォード大学修士課程修了、慶応大学にて工学博士号取得。 ◎著書「最強のモノづくり」(御沓佳美 共著)「“KZ法”工場改善」「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「5Sでつくる高収益工場ビデオ」「図解でわかる生産の実務 現場改善」「現場改善入門」「現場の問題解決マニュアル」他多数。平成16年日本経営工学会経営システム賞受賞。工学博士、技術士(経営工学)。