これからの変化の時代に向けてのカイゼン【16】

これからの変化の時代に向けてのカイゼン【16】

【急所65】 設計改善は、現場改善に100倍勝る。(2)

先回は現行の製品の設計変更の話をしましたが、今回は設計に対する情報の大切さの話をいたします。

 

今回はつい最近、指導先のO社で経験した改善の話をします。

今現在の人が足りないのに注文が増えるという嬉しい悲鳴が上がっている状況に役に立つと思ったからです。

 

仕事がない状態はとてもつらいものです。

しかし仕事が来るけれどこなせないという状況もつらいです。

「嬉しい悲鳴」ということは、いくら嬉しくても悲鳴ですから。ギャーッ!

 

O社も同様の状況です。

みんな残業をして頑張っているけれど仕事は遅れ気味。

このままではブラック企業になってしまう……という状況でした。

 

私は社長や皆さんと一緒に現場で作業の状況をしっかりと見ていましたが、

事態を好転させるようなアイデアは出せませんでした。

これまでもズーっと改善を積み重ねていましたから、かなり作業のレベルは高いのです。

 

そこで私は作業をしているSさんにちょっと声をかけました。

「Sさん、今何やってんの?」

すると返ってきたSさんの答えはちょっとビックリでした。

「設計に抜けがあったので手直しだよ!」

 

何が起きてそうなったのか??を聞いていくと、以前は会社も小さくて事務所にみんな一緒にいて仲良くワイワイやっていた。

その時は営業の人たちは注文が取れると、まずみんなに今度の注文は、材料は何、形状はどう、ここ注意して、などと事前に情報をみんなで共有化していたのだそうです。

するとSさんはその場で何を準備するかが分かり外段取りができました。

またこれまでの経験から設計の人たちにこうしてくれると作り易いといったアドバイスやお願いができたのです。

設計の人たちもその場でいろいろ質問できたので事前に間違いを避けることができたのです。

未然防止ですね。

 

ところがその後会社は大きくなり、事務所も大きくなり部署ごとが離れてしまい、そのようなコミュニケーションができなくなり間違いが増えているとのことでした。

そこにいた社長もみんなもびっくりです。

でも全員納得。

そこで即断即決、事務所のレイアウト変更です。

 

これまで営業島、設計島、管理島といった感じの工程別配置だったのですが、商品ごとに営業も設計も管理も一緒の商品別配置に変えました。

お席替えです。

 

目で見えることだけで判断していましたが、見えないで気付かなかったところが見えたのでできた改善でした。

この改善はものすごく大きな効果を生みそうです。

ご参考になさってください。

これからの変化の時代に向けてのカイゼン【16】

◎現場改善No.1コンサルタント。大手自動車メーカーにて、一貫して生産効率改善(IE)を担当し、その改善手腕を見込まれて、社命にてスタンフォード大学大学院に留学。帰国後、若くしてIE責任者として、全国の主力工場を指導、抜群の成績をあげる。 ◎現在、 柿内幸夫技術士事務所の所長 として、自動車、家電、食品、IT関連メーカーなどを指導。「現場で、全社員が一緒に改善する実勢指導」という独自のノウハウで、社長・工場長はもとより、現場の人たちから絶大な信頼をよせられる。中小企業のドロ臭さと、最新鋭の工場ラインの双方を熟知した手腕に、国内だけでなく欧米、中国、アジアの工場の指導に東奔西走する毎日である。 ◎1951年東京生まれ。東京工業大学工学部経営工学科卒業、スタンフォード大学修士課程修了、慶応大学にて工学博士号取得。 ◎著書「最強のモノづくり」(御沓佳美 共著)「“KZ法”工場改善」「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「5Sでつくる高収益工場ビデオ」「図解でわかる生産の実務 現場改善」「現場改善入門」「現場の問題解決マニュアル」他多数。平成16年日本経営工学会経営システム賞受賞。工学博士、技術士(経営工学)。