これからの変化の時代に向けたカイゼン【9】

これからの変化の時代に向けたカイゼン【9】

今回は『儲かるメーカー 改善の急所101項』【急所12】の解説です。

無駄には七種類あるが、最も注意すべきは造りすぎるムダである。

 

現在、多くの工場が大忙しです。

人も時間も足りません。

そこで先回は「人手不足」を取り上げましたが、今回は「造りすぎるムダ」についてお話しします。

 

先日伺ったK社も大忙しで残業がとても多くて困っておられました。

次の土曜日は休日出勤する計画とのことでした。

 

早速現場に行ってみると、第一工程の圧造プレスでは生産ロットサイズが必要以上に大きいのです。

「これは『つくりすぎのムダ』ではないでしょうか?」と聞くと、リーダーのAさんから「そうかもしれないけど、忙しいので段取り替えをする時間がない!」との答えが返ってきました。

 

しかしこの判断は間違いです。段取り回数が減って能率が上がっていいように思えるけれど、その結果、ひとつの製品を作る時間が長くなり今ほしいものが今作れないという状態になっています。

モノが多いので運搬も増え後工程も同様の忙しさです。これは悪循環です。

 

段取り替えもやる人がいないということで事前準備(外段取り)もできていません。

ちょっとバタバタです。

 

そこでみんなに集まってもらって、「ウソだと思うかもしれないけれど、ロットサイズを小さくしてみよう。そして時間を調整して外段取りをしっかりやってテキパキ段取り替えしよう」と提案し実行しました。

するとモノが停滞しないで流れ始めてみんなの思いとは逆に生産性が上がり残業が減り始めました。

 

忙しいので取った対策が実は作りすぎのムダで却って事態を悪化させているということはよくあります。

チェックをお願いします。

 

ちなみにトヨタ生産方式の中にある「7つのムダ」の一番目は「つくり過ぎのムダ」です。

このムダは本当に奥が深く、会社経営に直接に影響します。

私自身もその深さと大きさをすべて理解できていないと思います。

というのもコンサルタントになって26年経った今でも新しい発見を続けているからです。

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◎現場改善No.1コンサルタント。大手自動車メーカーにて、一貫して生産効率改善(IE)を担当し、その改善手腕を見込まれて、社命にてスタンフォード大学大学院に留学。帰国後、若くしてIE責任者として、全国の主力工場を指導、抜群の成績をあげる。 ◎現在、 柿内幸夫技術士事務所の所長 として、自動車、家電、食品、IT関連メーカーなどを指導。「現場で、全社員が一緒に改善する実勢指導」という独自のノウハウで、社長・工場長はもとより、現場の人たちから絶大な信頼をよせられる。中小企業のドロ臭さと、最新鋭の工場ラインの双方を熟知した手腕に、国内だけでなく欧米、中国、アジアの工場の指導に東奔西走する毎日である。 ◎1951年東京生まれ。東京工業大学工学部経営工学科卒業、スタンフォード大学修士課程修了、慶応大学にて工学博士号取得。 ◎著書「最強のモノづくり」(御沓佳美 共著)「“KZ法”工場改善」「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「5Sでつくる高収益工場ビデオ」「図解でわかる生産の実務 現場改善」「現場改善入門」「現場の問題解決マニュアル」他多数。平成16年日本経営工学会経営システム賞受賞。工学博士、技術士(経営工学)。