こだわり消費時代はコア技術を生かした専門屋で勝つ
だわり消費の時代を迎えて商品の二極化が進んでいる経営環境の下では、コア技術を生かした専門屋を目指す、という話です。
おたくは「何屋さんですか?」と問われた時に、一言で答えられますか?
顧客へ「モノ」ではなく「コト」の提供を目指したら専門性を高める事業展開になります。新規に市場を創出せねばならないからです。
価格比較サイトを運営する株式会社カカクコムの田中実社長は消費者の価格志向に関して下記のように語っています。
『やはり二極化が続いている。
例えば40万円するデジタルカメラや欧米の高級家電などが信じられないスピードで売れており、値段も下がらない。
個人的に自動車が好きなので最近限定モデルを購入したが、すぐに完売し、半年たっても納車されない。
一方で水やおむつ、清涼飲料などいつでも買える日常的な商品への価格志向は強い。
デフレとインフレが同居している印象だ。』
(出典:『日本経済新聞』2016年3月21日)
1. 二極化
二極化は避けられない社会現象と考えねばなりません。
少子化で人口が減る中で、首都圏に集中しつつある人の流れ。
10人にひとりが東京の人であり、さらに4人にひとりは東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)です。
つまり、地方と都市部での人財格差。また、所得格差やそれにともなって発生する教育格差。
ピンの方とキリの方の差がドンドン広がっています。
高度成長期に一生懸命に働いていた親を持つ世代の方なら、皆そう意識していた「中流階級」が消滅しつつあるのでしょう。
一昔前なら、中間層向けに“無難な”商品を販売してもそこそこ売れた。
その結果、乗り遅れる企業も少なく、業界全体で伸びていたわけです。
それが、平成バブルが崩壊し、1990年代の前半あたりから外部環境が変化し始め、今日に至っています。
価格が高いモノと低いモノ。売れるモノと売れないモノ。
儲かるモノと儲からないモノ。市場で明確に選別されます。
その結果、中小製造業でも収益性の高い企業と低い企業でのバラツキが広がり、ここでも二極化が進んでいます。
市場の不確実性が高まる中、高収益率を達成する企業とそうでない企業との格差は、1980年代と比べて、2000年代以降、拡大しています。
価格が高いモノと低いモノ。
自社製品は、どちらに分類されますか?
2.専門屋
さらに、価格志向の二極化の影響を受ける企業経営について、カカクコムの田中社長は次のようにも語っています。
家電メーカーは中国や台湾の企業との価格競争に巻き込まれて苦戦した。
開発力が低下したのか、欲しい商品が出てこない。
今はこだわり消費の時代だ。
トースターや掃除機、洗濯機など単一商品に特化したメーカーがどんどん出ている。
ポータルサイトも総合的な内容では勝てず、特定の分野に強いサイトが優位になる。
(出典:『日本経済新聞』2016年3月21日)
“尖った”メーカーが生き残る。特徴がなければ価格競争に巻き込まれ消えていくだけ。
中小製造業が絶対に避けねばならないのは価格競争。
商品の価格決定権を自ら持つ事業展開を目指すのが存続と成長のカギです。
高付加価値化で欠かせないのはお客様視点であり「コト」に着目すること。
「コト」を創出するということは、新たな市場を生み出すコトと同じであり、価格競争を回避できます。
“尖った”商品こそが、こだわり消費時代にマッチした商品です。
まちがっても、今や消えつつある中流階級向けの商品開発に経営資源を振り向けてはなりません。
必ず価格競争に陥って動きが取れなくなります。
目指すは、コア技術を生かした“専門屋”。
製品でもサービスでも、それに特化した技術を磨き上げます。
出る杭を目指します。
そもそも、中小製造業の経営資源には限りがありますから、一点突破主義経営は中小のモノづくり工場向きです。
コア技術を生かして、どのような分野に特化すれば“尖った”製品やサービスを提供できるのか考えます。
大手にまねのできない中小ならではアイデアで持続的な競争優位性を築きます。
そうして存続と成長を実現させます。
まとめ
こだわり消費の時代を迎えて、商品の二極化が進んでいる経営環境の下では、コア技術を生かした専門屋を目指す。