ここまで必要!改善の動作分析をする目|元トヨタマンの目

ここまで必要!改善の動作分析をする目|元トヨタマンの目

トヨタで改善で動作分析をする際には、徹底的に分析することを教えられた。

その際の具体的事例として次のような話があったので紹介したい。すこし尾籠な部分もあるがまじめな話なのでお付き合い願いたい。

ウォシュレットのない時代の話だ。まずトイレで用をたす場合の手順を述べる。

 

①用をたす
②ティッシュで拭く
③衣服を元に戻す
④手を洗う

 

このような手順になることに、どなたも異議はないと思う。

しかしここにすでにおかしな点がある。それは④で手を洗うという行為は、②で手が汚れたという前提で行なわれる。

しかしもし②で手が汚れているとすれば③の行為をした時に衣服に汚れが付いてしまうことになるではないか。

 

違う言い方をすれば、②で手が汚れて③の行為を行なえば、衣服についてその汚れがとれてしまうのだから④であえて手を洗わなくてもいいのではないか……という風にも言えるのではないだろうか。

したがって、本当に厳密に言うなら

 

①用をたす
②ティッシュで拭く
③その姿勢で手を洗う(その位置に手洗い場を設置しなければならないが)
④衣服を元に戻す

 

という手順でなければならないわけだ。

実際には手にはついていないのに、生暖かい感触から、ついたような気がして汚いような感じがするから、物理的に手を洗える最後の段階で手を洗えばすっきりした気持ちになる、といったのが本当のところではないだろうか。

この話を初めて聞いた時、衝撃を受けた。

 

生まれてから当たり前だと思って何の疑問ももっていなかったことも、じっくり観察してみるとおかしなこともあるものだと考えさせられてしまった。

私が改善の世界にのめり込んだきっかけはこの変な動作分析の話ではなかったかと、今考えてみると思うのである。

 

元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。