いまだ非効率が残る調達業務。見直し・デジタル化で利益体質強化へ

いまだ非効率が残る調達業務。見直し・デジタル化で利益体質強化へ

先日、ある大手電機メーカーの資材担当役員に会い、第4次産業革命の話題になった。設計や製造、保全の分野ではIoTやデジタル技術を使った先進的な取り組みが目立つが、調達はどうなのかと思い、そのあたりを聞いてみた。

すると、答えは「まさに今、そこに課題感を持っている」とのこと。一概に何が調達のデジタル化なのか、成功のモデルや将来の姿は見えていないが、第4次産業革命が進み、あらゆる工程でデジタル化されるなかで、調達も形は変わっていくだろう。それに向けた取り組みはしていかないといけないよねと話してくれた。

その会社では、
これまで調達の多くは世界各地の工場で独自に行っていたため、

・高く買っていた (ボリュームディスカウントの交渉ができていなかった)
・管理データがバラバラ (現地ごとにデータを管理)

という問題があったという。

今それを見直し、全調達品のリスト化とデータ照合、全社調達品と現地調達品を仕分けして、共通品は全社調達で交渉してボリュームディスカウントできるようにし、世界各地の工場で何を購入しているかを把握できるようなデータ構造にしたとのこと。

こうしたことで調達コストは数%下がる見通しだと話してくれた。

利益体質を強化するには、製造原価を下げることが鉄則である。ムダをなくし、製造原価をスリム化しておくことで、景気が悪く、売れない時でも一定の利益を確保し、逆に売れた時は大きな利ざやを稼ぐことができる。

日本の製造業は、良い製品を作って売上を上げる、設計を磨いてコストを下げる、製造現場を改善してムダを減らすことには長けている。
何十年もギリギリまで磨きあげ、乾いた雑巾から1滴のムダを絞り出す努力を続けてきた。もちろん今後もこれを継続していくことは大事だが、一方で、前述の企業のように調達にはまだムダ、非効率の部分が多く残っている。

第4次産業革命はすべての工程に変化を促す。調達の見直しは、実は隠れた利益の源泉である。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。