【2019年 年頭所感】日本機械工業連合会、誠心誠意の努力を継続
日本機械工業連合会 会長 大宮 英明
皆様、新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご支援とご協力に対し、改めて深く御礼申し上げます。
昨年は、トランプ政権下の通商問題や自然災害等変化の年でしたが、我が国経済は、全体として緩やかな回復基調にあり、生産や設備投資も増加傾向が続いております。この中で、我が国の機械産業の生産も伸長しており、昨年11月に公表いたしました日機連の2018年機械生産の改訂見通しでも、17年比2.9%増の77兆3千億円となっております。この水準は、やっとリーマン危機前の水準に到達した金額であり、また、30年前とほぼ同じ水準であることから、必ずしも手放しで喜べない数字であります。
一方、課題に関しましては、6年間にわたる景気回復の中で、失業率2.3%程度とひっ迫した雇用情勢が続いており、人手不足の問題は頭の痛い問題です。政府は働き方改革を進める一方、入管法を改正し、外国人材の受け入れ拡大に舵を切りますが、その円滑な実施は機械産業にとっても重要な課題となります。また、他の国にも増して、イノベーションを活用した生産性革命への取り組みが、わが国では喫緊の目標となります。
通商環境の変化への対応も今年は大きな課題となるはずです。嬉しいニュースとしましては、TPP11が昨年12月30日に発行し、日EU FTAが今年発効することであります。日本がその実現に貢献した、この二つの巨大なFTAを、機械産業もうまく活用して、国際展開していくことが望まれます。他方で、昨年来の米国トランプ政権に端を発する保護主義的な措置の連鎖は、多いに気に掛かるところであります。我が国の機械産業は、グローバルなバリューチェーンを前提として国際展開しておりますが、保護主義はそのビジネスモデルの前提を揺るがすものであります。
私は、APECビジネス諮問委員会の日本代表委員をしておりますが、昨年末のパプアニューギニアでのAPEC首脳会合では、保護主義防遏(ぼうあつ)に関するメッセージをめぐり紛糾し、首脳宣言を発出することが出来ないという異常事態に陥ったことは記憶に新しい出来事であります。そして本年は、いよいよ米国とのTAG交渉も始まります。自由貿易と国際的なバリューチェーンこそは、我が国機械産業発展の基礎であり、今年は通商問題に目を離せない年になりそうです。政府にも是非自由な通商システムの維持発展に向けてご尽力をお願いしたいと存じます。
また、言うまでもなく、AI、IoT、ビッグデータに代表される急速な技術革新と国際競争の激化への対応は、機械産業にとり最重要の課題です。我々は、あらゆる経済活動がデジタル化によって変化し、繋がる第4次産業革命に対応していくことが求められています。この核となるのは、まずは企業の積極的な研究開発投資です。
日機連では、研究開発税制の拡充を中心として、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクト等の国際税制対応、自動車課税軽減等を柱とした税制要望を取りまとめ要望してまいりました。詳細は省略いたしますが、31年度税制改正において意味ある成果を実現することが出来ました。
IoTやロボットについては、3年前に作られた政府のロボット新戦略に基づき、RRI(ロボット革命イニシアティブ協議会)が重要な役割を担っております。ご存知のように、RRIは日機連に設置され、私が会長を務めております。おかげさまで、RRIの会員数は現在520と順調に増加し、IoTにおける国際標準化の推進、ロボット利活用の推進、ロボットイノベーションの支援という重要な役割を推進しているところであります。
IoTにおける国際標準作りについては、各国、特にドイツとの連携を強化しており、昨年春にはハノーバーメッセに参加するとともに、ドイツと3本の共同ペーパーを発表いたしました。また、本年4月のハノーバーメッセにも、パビリオン出展、日独共同ペーパー発表、各種フォーラム参加の方向で準備を進めているところです。IEC(International Electrotechnical Commission)においては、いよいよスマートマニュファクチャリングの国際標準作りの議論が具体化段階に入ります。RRIは、同分野で日本を代表する国内審議団体として位置づけられており、今後国際連携と国内調整を深めていく考えであります。
日機連、RRI共々、今後とも我が国機械産業の発展のため、誠心誠意努力を続けて参りたく、関係各位の引き続きの御指導、御鞭撻をお願い申し上げる次第でございます。
最後になりましたが、皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、新春のご挨拶とさせていただきます。