【2016年現代の名工】金属加工 12人のマイスターたち
2016年度の「現代の名工」160人が発表されました。今回は金属加工部門の名工の受章者をご紹介します。
現代の名工は、卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を表彰するもので、技術者にとっての名誉であり、若手技術者のお手本です。
★ものづくりニュースでは、そんな名工の皆様への敬意と、若手技術者の皆様への目標の提示、日本の製造業が持つ優れた技術と技術者の努力をより多くの人に知っていただきたいとの思いから、「現代の名工」受章者の皆さまをご紹介いたします。
孝治太士(こうじふとし)さん
・福井県 60歳
・板金工
・アイシン・エィ・ダブリュ工業(株)
板金溶接物において溶接歪や曲げ誤差を考慮して、通常一㎜以内の規格に対して〇.五㎜以内での製作ができる。また、〇.〇〇二㎜までの加工規格に対応でき、特に肉厚のないもの、リング状等の変形しやすい部品加工を得意とし、高精度な金型や設備製作に貢献した。こうした板金、溶接、機械加工などを駆使し設備、付帯装置の考案、機構改善などを行い、生産性向上、品質向上に寄与した。
参考:アイシン・エイ・ダブリュ工業、AW-I 工機部 孝治太士「現代の名工」に
井村俊治(いむらしゅんじ)さん(写真左)
・静岡県 56歳
・金属特殊加工機工
・アスモ(株)
長年にわたり設備・金型製作や保全に必要な部品の機械加工業務に従事し、設備や材料の特性を熟知し、その豊富な知識とアイデアを具現化する優れた技能を活かした幾多の部品加工工法を確立するとともに、金型コストの低減に貢献をしている。また、後進の育成において、国の内外を問わず技能者の育成に尽力している
水田泰弘(みずたやすひろ)さん
・佐賀県 61歳
・旋盤工
・(株)戸上電機製作所
NC旋盤や普通旋盤、マシニングセンタを利用した部品加工及び治具製作に優れた技能を有している。
また、冷間鍛造機械の部品及び金型の製作を手掛け、部品製作納期の短縮や、コストダウン、加工に関わる人員削減など生産性の向上に大きく寄与した。さらに、高度熟練技能者として、社内外では技能五輪、技能グランプリ出場者へ実技指導を実施し、後進指導者の育成にも大きく貢献している。
参考:戸上電機製作所、当社従業員が『卓越した技能者(現代の名工)』に選ばれる
新関謙二(にいぜきけんじ)さん
・東京都 53歳
・中ぐり盤工
・(株)日立製作所中央研究所
半導体デバイス製造・検査装置、医療・バイオ関連装置を始めとする機械機構装置部品の中ぐり盤加工に関し、特に難切削材の高精度加工技能、複雑形状の精密加工技能、無変形加工技能に卓越している。電子顕微鏡装置や非軸対称非球面ガラスレンズ加工装置など幾多の研究設備や試作装置の部品加工を担当したほか、数々の考案・工夫・改善を行い、開発効率の向上、安全確保に寄与している。
日刊工業新聞、卓越―現代の名工/中ぐり盤工−日立製作所中央研究所・新関謙二氏「チャレンジが成長の糧」
田中明夫(たなかあきお)さん
・東京都 61歳
・板金工
・日野自動車(株)本社・日野工場
試作車の車体組立に精通しており、優れた技能を有している。特に、打出し板金作業における立体形状出しや外板面の仕上げ作業において、卓越した技能を有している。また、板金加工に不可欠な溶接技能も講師を務めるなど、社の第一人者である。工場板金職種の技能検定委員を首席も含めて十三年間務め、実技試験の実施に貢献するとともに、後進技能者の育成に多大な功績を残している。
猪俣純朋(いのまたすみとも)さん
・愛知県 54歳
・金属特殊加工機工
・(株)デンソー基礎研究所
レーザ光を用いた微細加工分野において卓越した技能を有しており〇.二㎜の穴を〇.〇三秒で加工するドロスレスレーザ工法を確立、自動車部品の加工に適用し年一三二〇万個生産を可能とする等、創意工夫を凝らして試作・開発品に貢献した。現在はレーザ工法を広めるとともに、培った経験を伝承すべく技能者の指導・育成に尽力している
佐藤朝由(さとうともよし)さん
・愛知県 54歳
・数値制御金属工作機械工
・アイシン・エイ・ダブリュ(株)
機械加工業務に従事し、マシニングセンタ加工においてはその卓越した技能で常に第一線に立ち、自ら培ったノウハウを活かし、高精度金型の製作に大きく貢献。鍛造型において従来の技術を覆す「高硬度材直彫り切削加工」を確立し、面性状を従来の二分の一、寿命を二倍に向上させる等、画期的な技能・技術を確立させた。近年では女性技能者や障害者への指導を積極的に行う等、技能伝承・後進育成に尽力している。
奥村茂(おくむらしげる)さん
・愛知県 65歳
・金属手仕上工
・豊和工業(株)
四〇年以上にわたり銃器の試作及び量産品の立ち上げに携わり、〇.〇〇一㎜台の精度を要求される製品内部の直線摺動部、曲面部の最終微調整を目視、手触りで仕上げていく卓越した技能を有している。さらに、熟練手仕上げ作業を自動化することにも尽力し、生産性の向上及び品質の安定を図った。また、事業内認定訓練校における訓練生の指導職を経て、若手技能士の育成に取り組むとともに技能伝承に貢献している
大谷時博(おおたにときひろ)さん
・山口県 54歳
・フライス盤工
・(株) 日立製作所鉄道ビジネスユニット笠戸事業所
数値制御(NC)フライス加工やマシニングセンタによる精密機械加工に精通し、鉄道車両台車のような大型で複雑な溶接構造物の機械加工や、新幹線の先頭形状のような三次元曲面の機械加工において優れた技能を有する。また、様々な改善活動を重ね、鉄道用車両先頭構体パネル加工法を確立し、今日の基幹作業へと発展させた。現在も所属部門の作業係主任及び安全専任者の立場から後進指導に尽力している。
植武春彦(うえたけはるひこ)さん
・茨城県 52歳
・金属特殊加工機工
・キヤノンモールド(株)友部事業所
視覚判断の限界といわれている一ミクロン以下の超高精度の加工を求められるカメラ部品・レーザープリンタ部品・宇宙開発関連部品等の光学系微細部品を、目ではなくヘッドフォンで研削音を聞き分けることによって一ミクロン以下の精度で仕上げる技能を有している。また、技能者育成塾を立ち上げ、現在でも塾長を務め後進技能者の育成・指導に貢献している。
萩原浩樹(はぎわらこうき)さん
・愛知県 56歳
・金属手仕上工
・トヨタ車体(株)富士松工場
プレス金型作成における、手仕上げによる金型調整において、各種素材の特徴を理解し、溶接技能・切削技能等で、群を抜いた加工精度を誇る。また、他の追従を許さないその高度な技能と知識を後進達に惜しげもなく伝承するとともに、若年層に物造りの楽しさと秘伝の技を伝えるべく技能五輪「抜き型」職種の後進指導に尽力をつくし、匠の技を持つ指導員としてチーフトレーナーで活躍している
倉井誠(くらいまこと)さん
・神奈川県 77歳
・金属手仕上工
・小沢工業(株) 本社工場
・氏は、金属プレス用金型組立やプレス加工において卓越した技能を発揮し、日本における家電製品や半導体部品の開発・量産化に多大な貢献をした。高い技能を持ち顧客からの難しい注文を製品化していくことは日本の宝である「ものづくり」の技能と精神を兼ね備えているといえる。加えて、後進の技能伝承にはひとかたならぬ努力を氏の教えを受けた技能五輪出場者も多数輩出している。
受章者の皆様、おめでとうございます!
参考:厚生労働省、平成28年度 卓越した技能者(現代の名工)を決定しました