【状態監視モニタ】vol.7 回転モニタ(その1)

【状態監視モニタ】vol.7 回転モニタ(その1)

これまで回転機械の状態監視モニタとして、振動、スラスト、偏心、伸び差に関して説明してきましたが、今回は回転数を計測する回転モニタについて説明します。

信号処理の流れ

回転モニタにおいて、回転数に比例した周波数のパルス状信号入力を受けて、回転数に変換するまでの信号処理の流れを図11で説明します。

なお、回転モニタでは回転数の上限/下限それぞれに対して注意警報と危険警報を設定できますが、図11では回転数に比例したレコーダ出力までの流れを示し、警報や指示の部分については割愛しています。

回転モニタに入力される信号は「回転数に比例した周波数のパルス状」と書きましたが、これはセンサの種類とターゲットの形状などによって変わります。

 

通常、完全な矩形のパルス波形ではなく、正弦波に近い形状のものから矩形の角が取れたような形状のひずみ波形になります。

そこで、入力された波形は図11の①に示すトリガ回路と②③に示す波形整形回路を通してきれいなパルス波形に整形しています。

この波形整形回路③の出力である整形されたパルス信号は、回転数演算処理部④に入力され、回転数への変換処理が行われます。

 

回転数演算処理部では、一定のゲート時間内に入ってきたパルスの数と最初のパルスから最後のパルスまでの時間を計測して、パルスの平均周期t(s)を演算します。

なお、ゲート時間内のパルス数が1個以下の場合にはパルス1間隔毎のパルス周期t(s)を計測することとなります。

ここで演算されたパルス周期t(s)は、パルス周波数f(Hz)の逆数であり、回転数検知歯車の歯数をN、回転数をR(rpm)とすると、R = (60×f) / N = 60 / (t×N)の関係から回転数が演算されます。

 

図11の⑤に示す入力異常判別部分は他のモニタと基本的に同じで、入力信号の直流成分がある範囲を逸脱した場合に入力異常として判断しています。

この入力異常警報設定値はセンサの種類によって異なります。

入力異常状態となった場合には⑥の信号制御によりアナログ出力は抑制されますが、入力異常がないと判別されている状態では、④の回転数演算処理部で演算された結果がレコーダ出力として出力されると同時に、表示や警報比較に使われます。

スクリーンショット 2017-03-31 14.12.52

入力センサの種類

回転モニタの入力センサとしては、2011年2月号および2011年3月号の「回転パルス検出センサと位相基準センサ」で取り上げた、渦電流式変位センサ(FK-202F、RD-05A)や電磁ピックアップ(MSシリーズ)が適用されます。

回転パルス検出用センサとして適用する場合の渦電流式変位センサと電磁ピックアップのそれぞれの特徴、比較に関しては表4を参照ください。

screencapture-shinkawaelectric-column-20120313-html-1490937288434のコピー

ここでそれぞれのセンサに関して、上記の「信号処理の流れ」で述べた入力異常判別について説明します。

まず渦電流式変位センサについてですが、渦電流式変位センサとしてはVK-202Aもあるのに例としてFK-202FとRD-05Aしか書いていないのには理由があります。

大きな理由としては入力異常の中のセンサ断線検知の問題です。

 

渦電流式変位センサを入力とする軸振動モニタや軸位置モニタの場合、入力電圧に正常範囲としての上下限範囲を設定して、変位計出力電圧の過大および過小をセンサ断線などの入力異常として判断しています。

しかし、回転パルス検出の場合、正常に計測している状態においても回転数検出歯車の谷の部分で飽和電圧(出力電圧過大)となることが普通であるため、回転モニタの入力異常検知は電圧過小側(ゼロボルト側)でのみ判断することになります。

したがって、センサ断線を検知するためには、断線時の出力電圧はゼロボルト側となることが必要となりますが、VK-202Aはセンサ断線時の出力が飽和電圧(出力電圧過大)となり、回転モニタでの断線検知ができません。

 

これに対して、回転パルス検出専用のRD-050Aはもちろんのこと、FK-202Fもセンサ断線時の出力が電圧過小側(ゼロボルト側)となるため回転モニタでの断線検知が可能となります。

次に電磁ピックアップを適用した場合の入力異常検知についてですが、正常に回転パルスを検知している時の電磁ピックアップの出力信号は0V(ゼロボルト)を中心としてプラス側とマイナス側に振れる正弦波に近い波形となります。

ここで電磁ピックアップの検出コイルが断線した場合も、起電力を発生しなくなり出力は0V(ゼロボルト)となりますので、そのまま電磁ピックアップの出力電圧値で断線を検知することはできません。

 

そこで、回転モニタの入力として電磁ピックアップを適用する場合には、モニタから電磁ピックアップ側に微少電流を流してやって断線を検知しています。

これは、電磁ピックアップが電子回路を持たず、モニタ側から見てコイルだけの単純な構造であることから可能となっています。

次回も引き続き回転モニタに関して、オートトリガとマニュアルトリガの違い、波形整形回路における波形ヒステリシスの意味などについて説明します。

 

出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社

 


アペルザニュース編集部です。日本の製造業、ものづくり産業の活性化を目指し、日々がんばっています。