【松下幸之助 講話】激変の時代だからおもしろい
私の最も尊敬する人は「松下幸之助」です。言わずと知れた松下電器産業(今のパナソニック)の創業者で、「経営の神様」とも言われる産業人です。一代で世界的企業に育て上げただけでなく、平和と幸福な社会を作り出すための「PHP研究所」や、次代のリーダーを育てるための「松下政経塾」を設立するなど、公的活動にも積極的でした。
いま日本を含め、世界の製造業が激動のなかにあり、企業の舵取りが難しくなっています。戦前から戦中、昭和の高度成長期という、今以上に不安定で難しい時代を生き抜いてきた偉大な先人の言葉は心を打ち、私たちが歩むべき道を照らしてくれます。
そこでPHP研究所が公開している松下幸之助講話をご紹介します。
昭和44年(1969年)5月5日、松下電器の社員向けに行った講話です。1969年といえば、日本の高度成長期の後半。1964年に東京オリンピックを成功させ、前年の1968年に西ドイツを抜いてGNP世界2位になり、翌年1970年には大阪万博を控えていました。そんな時期に、松下幸之助はどんな話をしたのでしょうか。
当時は、家電もテレビと洗濯機、冷蔵庫の3種の神器が各家庭に入っていった時期で、メーカー間の競争が激しい時代。昔のような安定はない激変の時代を生きる社員に対し、こう投げかけます。
そういう(激変の)時代でありますけども、だから困るんやなくして、だからおもしろいんだと。
過去のいかなる人の時代よりも、おもしろい時代である。
おもしろいというよりも、非常に有意義な時代であると。
この時に生きて、そして、それぞれの思いをもって我が仕事に対して取り組んでいくということが、非常に恵まれた世代に生きたもんだという考えをもったらどうか。
苦しいと思って物事に向かうのと、楽しい、嬉しいと思って向かうのでは、モチベーションも動きも変わり、それによる結果も大きく異なってきます。激変の時代だからといって悲観的に捉えるのではなく、逆にそれは流動性が高く、自分の活躍できる隙、チャンスがあるということ。今はまさにそんな変化の時代であり、松下幸之助の言葉を借りれば「おもしろい時代」です。その刺激を楽しめる私たちは幸せ者なのかもしれませんね。
出典:PHP研究所、【PHP研究所刊 DVD「松下幸之助 経営百話」】