【振動解析と診断】vol.6 振動解析診断システムの紹介(1)
前回まで振動解析に使う主なグラフやロータキットを用いた異常発生時の解析事例等の説明を行っていますが、今回は、新川電機の振動解析診断システムに関して紹介します。
システム構成
新川電機の振動解析診断システムには、常設型のinfiSYS RV-200とポータブル型のKenjinがあります。
いずれも解析機能、解析グラフの種類および操作性等は同じですが、そのシステム構成が大きく異なっています。
図24にinfiSYS RV-200の典型的なシステム構成例を示しています。図中の左側と真中はすべり軸受で支持された大型回転機械の状態監視システムと解析診断システムを示しています。
真中は状態監視モニタが新川電機のVM-5シリーズや他社製モニタの場合であり、この場合には状態監視モニタのバッファ信号をデータ収集装置DAQpodに入力し、DAQpodで解析演算処理を行い、そのデータをイーサネットで上位の解析PCであるinfiSYSビューステーションに伝送することでシステムを構成しています。
また、左側は状態監視モニタが最新型のVM-7シリーズの場合であり、この場合VM-701B振動モニタモジュールに解析ボードを実装することで外部にDAQpodのようなデータ収集装置を設けることなく、VM-7モニタから直接イーサネットでinfiSYSビューステーションに解析データを伝送することができます。
図中の右側は通常、状態監視モニタの設置されていないような転がり軸受で支持された小型回転機械の例であり、加速度センサによりケーシング振動を検知しています。
DAQpodにはCA-302などの二線式加速度センサ駆動用の定電流電源出力を持っているため、加速度センサをDAQpodに直接接続することができます。
図24のシステム構成例では、大型回転機械には19インチ・ラックマウントタイプで最大96ch(※1)のDAQpod AP-2000が、小型回転機械には自立設置型で最大24ch(※1)のDAQpod DP-2000が設置されていますが、それぞれのDAQpodが大型回転機械専用とか小型回転機械専用ということではなく、それぞれ共通の機能を持っており、設置形態と入力CH数によって選択することができます。
このようにして、状態監視モニタが新川電機製か他社製かに関わりなく、また対象の回転機械もすべり軸受支持の大型回転機械と転がり軸受支持の小型回転機械の混在したシステムを構成することが可能です。
infiSYS RV-200では、1システムで最大480chまでの入力を接続することが可能です。
次に図25にポータブル振動解析システムKenjinのシステム構成を示します。
Kenjinは24ch入力(※1)のKenjinポータブルデータ収集装置KJ-2000と解析PCであるKenjinポータブルビューステーションのみから構成されるシンプルな構成となっています。
また、KJ-2000は入力端子がBNCコネクタとなっているため、既設モニタ前面のBNCコネクタ(※2)からのバッファ信号を両端BNCの同軸ケーブルで簡単に接続、収集することができます。
したがって、重要な回転機械で状態監視モニタまでは設置されているが、常設の振動解析システムまでは設置されていないような設備において、異常発生時の振動解析実施や、機械のスタートアップ/シャットダウン時のトランジェントデータ収集を行う際、間単に持ち運んですぐにデータ収集を行うことができます。
※1 infiSYS DAQpodおよびKenjin KJ-2000の最大入力点数にはフェーズマーカ(位相基準信号)の入力点数も含みます。
なお、振動チャンネル、フェーズマーカチャンネルとも4ch/ボード単位のため、接続可能入力点数の増減は4ch毎となります。
※2VM-5シリーズやVM-7シリーズ等のAPI 670規格に準拠して設計された振動モニタでは、モニタ前面のBNCコネクタとモニタ裏面の端子台の両方からバッファ信号が出力されています。
そこで、解析システムに接続するバッファ信号は一般的に、infiSYS RV-200のような常設システムの場合には裏面の端子台を、Kenjinのような仮設でデータ収集を行うポータブルシステムの場合には前面のBNCコネクタを使用します。
主な仕様
回転機械振動解析診断システムinfiSYS RV-200の主な仕様を表2〜表4に示します。
また、写真1にデータ収集装置 DAQpod AP-2000の外観を、写真2にDP-2000の外観を示します。
写真3にはKenjinポータブルデータ収集装置KJ-2000の外観と現場への持ち運びに便利な専用ケースを示しています。
ポータブル振動解析システムKenjinの場合、測定チャンネル数やデータ収集間隔が異なりますが、データ表示と解析メニューは表4に示すinfiSYS RV-200と同じになります。
Kenjinでは、測定チャンネル数は最大24ch(※1)、データ収集間隔はトレンドデータ、波形データとも最短で0.1秒間隔(※3)となります。
※3.入力チャンネル数とスペクトルライン数の設定によって異なります。
次回も引き続きinfiSYS RV-200とKenjinの特長等について説明する予定です。
出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社