『USERS—顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略』でユーザ...

『USERS—顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略』でユーザーとは何か考えてみた

偶然とはいえ、『MAKERS』という本と一緒に買ったのが『USERS』で、思わず笑ってしまった。

家に帰って初めて気づいたのもおかしい。

『USERS—顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略』(アーロン・シャピロ、翔泳社)である。

 

サブタイトルが物々しいのに加えて、ご丁寧にもUSERSの文字の上にNOT CUSTOMERSと書いてある。

 

ここで、はたと気づいた。

「顧客」は通常Customerである。「消費者」はConsumerである。

ではUserとは一体何だったっけ。

 

本書では、ユーザーを顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、その他影響力を持った人々、と定義している。

デジタル・メディアとテクノロジーを通して企業と交流する人々とのことである。

これは、インターネットを介したデジタル社会を前提とした、顧客を含む広い概念なのだ。

そして、これらの多くの人々を満足させなければ、これからの企業は成り立たない、という警告を発しているのだ。

 

たまたま、並行してマッキンゼーのサイトで、“How retailers can keep up with consumers”という、今月のレポートを読んでいた。

これが、内容的にとても近いもので、どちらに書かれていたことだったっけ、と考えてしまうほど似ている。

要するに、デジタル世界に対応したビジネスに変えていかなければ生き延びられない、やるなら今でしょ、というものなのである。

 

本書は2011年に書かれたものであるが、監訳者(萩原雅之氏)が「当時ホットな話題になったブランドやサービスが中心だが古さは全く感じさせない」と言われているが、マッキンゼーのレポートを読んで納得した。

 

最も考えさせられた部分は、「なぜ多くの似たような製品が、同時にローンチされるのか?」というところである。

多くの人たちが同じようなアイディアを持っていて、技術的に実現可能になったとたんに製品として世に出すからだ。

そして、早すぎても、遅すぎてもいけない。

 

では、その中で抜きんでるのは誰か。

本書では、最も可能性の高いのは「一番初めに素晴らしいユーザー体験を提供した商品」を出すこと、と言っている。

多分、それも一瞬のことだろう。

 

時の流れとともに技術も進歩し、新しいアイディアが製品化され、新しい体験にユーザーは飛びついていく。

ユーザー中心主義は、常に走り続けなければならないということか。

※2013年10月に書かれた記事です。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任