『里山資本主義』を読みつつビットコインを考える

『里山資本主義』を読みつつビットコインを考える

仮想通貨(お金ではなくモノということになったようだが)ビットコインが破たんするのでは、と騒がれている。

ビットコインの理論的な元になっている中本哲史氏の論文を読んでみたが、私の頭ではよくわからない。

でも、これに基づいてビットコインが実現し、現に流通しているのだから、理論的に正しいと多くの頭の良い人たちが認めたのだ。

 

しかし、実現したはずのシステムをハッカーは破ってしまった。

お金だかモノだか知らないが、こんな実体のないものを信じる人間がいることが信じられない。

ビットコインの価値が上がれば幸せになると思っているのだろうか。

 

それが豊かさなのだろうか。

 

そんなとき、たまたま読んだ本が『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く(角川oneテーマ21)』(藻谷浩介・NHK広島取材班、KADOKAWA/角川書店)である。

ブルーの空と緑の大地のカバー写真、「里山」という言葉のイメージから、お口直しができるのでは、と手に取ったのである。

鉄腕ダッシュのダッシュ村のイメージでもある。

 

事例が沢山ある。

中国山地の岡山県真庭市の木材によるエネルギー革命、オーストリアのペレット・ボイラーによる地域ぐるみのエネルギー利用、広島県庄原市の過疎の村でのお年寄りの助け合い、など、どれもが心洗われる、いい話ばかりである。

想像してみる。

 

灯油の缶で作ったエコストーブで美味しいご飯を炊く私。

木材を張り合わせて作った建材(CLT)で建てたマンションで暮らす私、自分の家の畑でできた野菜を近所で融通し合って美味しく食べている私。

でも、現実はそう甘くはないことはよく分かっている。

 

都会が好きな私が里山で暮らせるわけはない。

毎日エコストーブでご飯を炊くなど面倒でできない。

野菜を育てるなんて無理。

 

これは夢の世界なのだ。

でも、里山に暮らさなくてもできることはある。

無駄にエネルギーを使ってはいないか、常に考えて生活に工夫を凝らすこと。

 

最初から無理と決めつけないで、できることからやっていくこと。

そして、一番考えなければならないのは、幸せとは何かということ。

「里山資本主義」が難しいエネルギー問題を一刀両断に解決できるなどと思ってはならない。

 

これは、意識転換のきっかけの書なのである。

 

※2014年3月に書かれた記事です。

 


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任