『道をひらく』で時を超えて変わらないものを知る

『道をひらく』で時を超えて変わらないものを知る

私が初めて社会人になった42年前、当時81歳だった祖父にこう言われた。

「部長になったつもりで自分のことを見てみなさい。

もしも、こいつは役に立たない、と思ったら、すぐに辞めるべきだ」

 

自分を自分で評価するのではなく、上司の目で評価する。

同様な考え方は、製品を評価するのは作り手ではなくユーザ、さらには市場である、ということにつながる。

120歳を超えた先輩(私の祖父)の言葉は、現代でも決して色あせてはおらず、真実を伝えている。

 

『道をひらく』(松下幸之助、PHP研究所)を読んだとき、祖父の言葉を思い出した。

なぜ、この本が500万部以上売れているのか、なぜ今も書店で平積みになっているのか、すぐに分かった。

時を超えて変わらない真実が書かれているからである。

 

私自身が大切にしてきたことが、言葉は変わってもちゃんと入っていることも嬉しい。

一つだけ、目からウロコが落ちた部分を紹介する。

「ピンとくる」という項である。

 

概略だけを書いてみる。

人間の身体の仕組みは複雑で巧みにできている。

それほどに複雑で大きいにもかかわらず、足の先を針の先でちょっとつついても、頭にすぐピンとくる。

 

すみずみにまで神経がこまかくゆきとどいて、どんなところのどんな小さな変化でも、間髪を入れずに頭に知らせる。

だから機敏にして適切な行動もとれる。

人のつくったいかなる組織もピンとくる間髪を入れずの反応が示せるかどうか、もう一度思いをめぐらしたい。

 

まさに、万人に問うべきことではないか。

国家のような大きな組織もそうだが、家庭という小さな単位の組織であっても、これは真実である。

自分で学ぶだけでなく、次の世代にも伝えていきたい。

 

※2014年2月に書かれた記事です。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任