『品質でもうけなさい』9-6.守りから攻めの品質管理
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9-6.守りから攻めの品質管理
最後に営業と品質についてお話します。
品質と言えば、設計品質(ネライの品質)、製造品質(デキバエの品質)と言うくらいですから、当然のように工場や生産現場の話が中心になります。
しかし、いくら品質でもうけなさいといっても売れてナンボの商売ですから、営業活動を無視して考えるわけにはいきません。
では、営業が品質に関わるのはどういう場合なのでしょうか?
営業マンの最大命題は、いかにして顧客の信頼を得て市場を拡大し、売上げを伸ばすかです。
もちろん品質に問題があったら積極的な営業活動などできません。
品質を作り込むことで営業活動を支えているのは工場です。
「3-4.検査をすれば品質が良くなる?」で、製造現場も重要な営業活動を担っていることを忘れるな、と言ったのはこういうことです。
このように営業では品質が良いのは当たり前ですから、営業マンが品質問題を意識するのは、お客様からのクレームを受けて頭を下げる時ぐらいしかありません。
彼が工場に対して厳しい口調になるのも当然でしょう。
営業マンは品質については被害者意識みたいなものを持っているのが普通です。
出来合いのものを売るだけなら、それでも良いでしょう。
要するに、注文とクレームを伝えるだけ。
あとは、競合他社と安売り競争に明け暮れて、工場にコストダウンを要求するだけのメッセンジャー営業です。
しかし、そんな受け身の営業が面白いでしょうか?
それ以前に、それを営業活動と考えているとしたら、どのようにしてお客様の信頼を得るのでしょう。
お客様の求める品質やコストは工場任せです。
自ら努力することと言えば、せいぜい接待を繰り返して、馴染みになることくらいでしょうか。
お客様が何に興味を持ち、何を求めているか?
この情報をいち早くとらえて、開発や工場に伝え、ニーズに応えていく……営業マンが信頼を勝ち得るのは、まさにこのような活動を通してです。
さて、品質管理では、右を向いても左を見てもCS・顧客満足の花盛り。
当然、品質クレームなど論外で、お客様が不満を持たないように品質を管理しなければならないという話になります。
普通、品質クレームをチャンスだと思うような営業マンはいません。
しかし、もし創造性あふれる営業マンなら、ここで発想を変えて欲しい。
品質クレームは「何を求めているか」の裏返しです。
不良、不具合で困っているという思いは、それを何とかして欲しいという強いニーズです。
営業が本当に目を向けるべきなのは顧客満足より顧客の不満です。
顧客満足ではなくて顧客不満足!!!……エライ先生からお叱りを受けそうなスローガンです。
お客様が満足すれば、商品に対する信頼を得て、安定した受注が確保できるようになるでしょう。
しかし、営業マンがお客様と一緒になって満足していたら、売上げなど伸びていきません。
むしろ、お客様の不満・不安を積極的に収集すること、それを解決する商品を提案することで新しい市場を開拓するのです。
これを「不」のマーケティングと呼んでいます。
これこそが営業における「品質でもうけなさい」のコンセプトです。
前節で不具合データから技術開発のニーズをつかむと言う話をしました。
そのデータベースに営業からの不の情報が加われば、もっと生々しい旬のニーズを手に入れることができるようになります。
これを可能にするのは、クレームで文句を言うメッセンジャー営業ではなくて、不の情報をデータで語る問題解決営業です。
営業こそまさに品質保証のリードオフマンなのです。
問題のない会社はもうかりません。
顧客満足とは問題がなければ良いということです。
一般的な品質管理のコンセプトです。
もちろん間違いではありません。
一方、顧客不満足は問題がなければもうからないということです。
ふざけて言っているのではありません。
これはまさに「品質でもうけなさい」のコンセプトです。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
街の本屋さんで営業に関するビジネス書を手に取ると、執筆者はたいていバイタリティあふれるモーレツ営業マンで、自分の成功体験をもとに営業マンの気構え、やる気について書かれてあるものが多い気がします。
もちろん、これは私の偏見かもしれませんので断定はできません。
しかし、販売目標とノルマに追われる厳しい仕事であることは確かですし、戦場に立ち向かうには販売技術以上に、精神的なものがきわめて重要なのでしょう。
大勢並んだ営業マンが顔を真っ赤にして、片手を振りかざして「がんばるぞぉ」なんて叫んでいる光景をテレビで見ると、私のような気の小さい人間にはとてもできない仕事だなと恐れ入ってしまいます。
その点、生産関係の文献は、理に適ったやり方さえすれば利益につながるというような内容のものが多く、モチベーションに言及しているものは生産というより人事・労務関係の範疇に入ってしまうようです。
テレビを始めとするマスコミで取り上げられる営業というと、やはりモーレツ型の営業が主流のように感じます。
気合だぁ気合だぁ! っていうのも結構ですが、そればっかりだと疲れます。
そうした中で提案型営業の考え方は、非常に合理的で創造的な営業のスタイルです。
こうした合理的な営業のやり方が、もっと注目されても良いのではないかと思うのですが……マスコミが飛びつくような華やかな成功事例が表に出てこないのかもしれません。
※参考文献
佐伯康雄著「メーカー営業部を売る軍団に変える法」(中経出版)