『品質でもうけなさい』8-4.技術問題は手におえない
※当コンテンツは『面白狩り』の提供でお届けいたします。
※目次とアーカイブはこちら
8-4.技術問題は手におえない
【問題11】固有技術をよく知らないので、外注に対する品質指導ができず、部品の不良を減らすことができない。
部品材料の受入窓口は、製造課が直接担当している会社もあれば、資材課とか購買課、あるいは検査課なんていう受入専門の組織を置いているところもあります。
いずれにしても、部材の固有技術について供給業者と対等以上に話ができるほど詳しいわけではありません。
しかし、もし本当に指導できないならば、コンサルタントと称する商売は成り立たなくなってきます。
コンサルタントが持っている固有技術は自分の専門分野のほかは、前職の経験で得た技術ぐらいのもので、クライアントの技術など全くないに等しいものです。
そんな危なっかしいコンサルタントでも、生産改善の指導はできます。
なぜだと思いますか?
生産改善に必要な技術は生産技術です。
生産技術と一口に言いますが、これには次のような3つの側面があります。
固有技術・製造技術の基になっているのは、機械工学や電気・化学などの専門技術です。
会社にとってこれらの技術は商品そのものですから、外部の人間が少しかじったぐらいでわかるシロモノではありません。
外注さんとこれで戦おうとしても、煙に巻かれてしまうのは当たり前です。
これに対して、管理技術はIEやQC、コンピュータなどのような、合理的に生産するための共通技術です。
コンサルタントはこの管理技術で指導を行います。
専門技術の必要な知識はその都度教えてもらえばよいのです。
自分で設計・製造するのではなく、問題を解決するのが目的ですから、知らなくても別に恥でもなんでもありません。
管理技術は共通技術ですから、だれでも一度身に付けてしまえば、対象製品や生産形態に関係なく活用できる技術です。
つまり、みなさんが自由自在に使えるようになれば、コンサルタントなんてお払い箱なのです。
どこの馬の骨かもわからないコンサルタントにいつまでも高い指導料なんか払いたくないでしょう?
だったら、さっさと管理技術を駆使できるようになりましょう。
その早道は問題解決の経験を積むことです。
外注指導なんて色んな経験ができる絶好の場です。
問題解決では管理技術=共通技術を上手に使え。
管理技術で検討し、固有技術・製造技術で対策させよ。
ということです。
とは言っても、ヒューマンエラーのような「つまらない問題」と違って、技術問題は奥が深くて解決に時間がかかるのは本当です。
それなりの投資が必要になることもあります。
これは仕方ありません。
なぜなら、技術問題を解決することによって新技術・新製品が誕生するかもしれないからです。
難しい、苦しいといって問題から逃げて欲しくないのです。
技術問題は新技術の種です。
技術問題を制した者が差別化を可能にし、競争に勝利することができるのです。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
私の場合、専攻は経営工学ですから、産業の基礎になる機械工学や電気、化学などについて深く掘り下げて勉強したことはありません。
もちろん学校で習う初歩的な知識ぐらいは持っていますが、あとは、せいぜい指導先で少しずつ教えてもらった程度の知識です。
コンサルタントはオールマイティでなければならないと豪語するエライ先生もおられますし、一般的にも知らないことは何もないというイメージがあります。
それが正しい姿とすると、私なんか間違いなくコンサルタント失格です。
しかし、そんな落第コンサルでも指導を通じて、会社の中に人材が育ってきて、自ら問題を見出し解決していくようになると、また一人同志ができたような気がしてうれしくなります。
難しくても決してあきらめずに、一緒に悩み考える……それが落第コンサルの指導スタイルです。