『品質でもうけなさい』8-1.つまらない不良が多すぎる
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8-1.つまらない不良が多すぎる
【問題8】作業者の不注意による不良が多く、ミーティングでの厳重注意やダブルチェックなどで再発防止に努めているが、一向になくなる気配がない。
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最も多い相談がこれ。どうしたらヒューマンエラーをなくせるかという内容です。
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そう、こんなことに一々時間を掛けて検討するまでもない感じがします。
ところで、不良品が市場に流出して、お客様に迷惑を掛けてしまったなんてことがあると、よく、クレーム調査報告書とか不具合対策書なんていう書類を作ってお客様に提出します。
要するに体のいい死亡診断書、詫び状のことです。
記載内容は決まっていて、細かい文言もほとんど同じ。
品質補償担当者は、このような書類を作るのが仕事と思っていますから、お客様が大騒ぎしない限りそれ以上の調査はしません。
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受け取る顧客側も、そんなことは百も承知で、深刻な影響がなければいつも通りの補償を受けて一件落着となります。
あるとき、図面と異なる部品が納入した製品に取り付けられていたという問題が起きました。
いつも通り報告書を提出して一件落着と思いきや、先月も同じ問題が発生したということで、お客様がかなり怒っているという連絡が伝わって、品質補償担当者は大慌てです。
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とにかく、一生懸命原因究明に努めている姿を見せておこうと、なぜなぜを繰り返すことにしました。
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現場まで足を運んで調査した結果、やはり作業者のヒューマンエラーとわかったので、作業者に厳重に注意したということで、お客様に謝りに行きました。
後はまあ、手厚い接待をしておけばなんとかなるのではないかと……。
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世の中まことに不条理と言いますか、これで本当に一件落着してしまうこともあるんで理解に苦しむのですが、このお客さんはさすがに、こんなものなぜなぜではないとキツーイひと言。
当然です。
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不具合をいつもヒューマンエラーで片付けていると、なぜなぜの質問をしようとしても、上の例のように後が出てきません。
これは、問題を考えるのを放棄したためにボケが始まっているのかもしれません……いや、冗談でなく。
きちんとなぜなぜを繰り返してみると、ヒューマンエラーの真の姿が見えてきます。
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こんなふうに問題の深掘りをやると、ヒューマンエラーが実は全く異なる問題であることが見えてきます。
さらに深掘りを進めれば、ちょっと気を付ければ回避できる問題ではなく、みんなが大好きな手法で分析すべき問題かもしれません。
私が、決め打ちは問題解決をつまらなくすると言うのはこういうことです。
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ヒューマンエラーが不具合の真因であるなんていうことはありません。
ヒューマンエラーという言葉が会話の中で踊っている間は、問題解決にまだ一歩も踏み出していないと肝に命ずるべきでしょう。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
問題の事例というとみなさん興味津々になりますが、ここまで読み進めてきたあなたにとって、ここからの話は特に目新しくは感じないでしょう。
復習問題のつもりで読んでください。
というものの、実際にこれらの問題に直面すると、わかっちゃいるけどやめられない。
それで相談を受けるわけですが、やっぱり当たり前のアドバイスしかありません。
この当たり前が難しいとわかった会社が伸びていくんです。
そして、その当たり前ができるように指導を依頼されるわけです。