『品質でもうけなさい』7-4.ライフサイクルコストで考えよ
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7-4.ライフサイクルコストで考えよ
さて、悪乗りしっ放しでは先に進みませんので、適当なところでストップして、アイディアの実現に向けて検討を始めます。
(1)批判ではなく代替案を出せ
まず、提案されたアイディアの実行可能性(feasibility)について検討します。
実行可能性の検討とは、技術的にそれが可能なのかどうかを調査することです。
どこの会社・職場にも批判するしか能がない輩が必ずいるもので、できない理由ばかり並べて問題解決に水をさします。
これが声の大きな役職上位者やベテランだと、みんな萎縮して黙ってしまうので、全くはた迷惑な存在です。
ここでは、これまで無視していた制約条件を改めて考えに入れて、実際にできるかどうかを確認します。
求められているのは、「……だからできない」という批判ではなくて、「こうすればできる」という代替案です。
このように制約条件と代替案を繰り返しながら、実現可能なレベルまでアイディアを具体化するのが実行可能性の検討です。
(2)費用対効果を考える
代替案を繰り返して、「これならできる」レベルの対策案が見えてきたら、いよいよ実施に向けて最後の検討を行います。
批判する人たちは、この期に及んでも「金がかかるからできない」と抵抗します。
でも、みなさんはこんな批判にビビる必要は全くありません。
例えば、対策のための新しい設備が1000万円だったとします。
額面だけ見ればかなり大きな投資ですがそれによって不良損失2000万円を解消することができるなら逆に1000万円のコストダウンです。
これを費用対効果と言います。対策はこの費用対効果で評価します。
ちょっと落ち着いて考えれば簡単なことなのですが、購入額が大きいとその数字に惑わされて冷静な評価ができなくなってしまいます。
費用対効果でメリットが不十分な場合は実行可能性のときと同様に代替案の繰り返しで最終的な対策案に絞っていきます。
(3)ライフサイクルコストとは
上の例で、対策のための設備を調べたところ、他のメーカーで500万円のものを見つけました。
これなら前の案の半値で済みますから、稟議もすんなり通って一件落着ということになりました。
めでたしめでたし……かどうか、なかなか難しいところです。
安い値札に飛びついて、あまり調査もしないで購入すると損をしかねません。
下の図はわかりやすく誇張してありますが、このように値段が安くても、購入後の維持費が高ければ費用対効果はあまり差がありません。
しかも、その後も同じ設備を使い続けますから、維持費の差がそのまま利益の差になってしまいます。
費用対効果は、初期投資だけで考えてはいけません。
その後の維持管理から廃却に必要な費用、さらには信頼性まで考えて評価しなければなりません。
これをライフサイクルコストと言います。
最近は地球温暖化など環境問題がさかんに議論されて、商品のPRも省エネや安全・エコ対策も含めて行われるようになりました。
しかし、そのような会社はまだまだ多いとは言えません。
相変わらず目先の安さだけ考えて失敗している例はたくさんあります。
賢いお客様は、値札だけでなく、買った後のコストも考えてものを購入しています。
対策のための投資も賢くやりましょう。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
ライフサイクルコストは、お客様の立場、ひいては地球環境のことまで踏まえてコストを考えています。
ライフサイクルコストの構成を見ると、品質=損失ということがよくわかるでしょう。
現場の実務担当者にとって、コストと言えば、製造原価を思い浮かべるのはごく自然なことです。
しかし、製造原価だけしか思い浮かべられないとなると、これは問題です。
これでは品質の意味を正しく理解していない、実は顧客満足の意味も理解していないのと同じです。
そういう会社が、品質で大きな失敗をして社会の信用をなくしてしまうのです。
せっかく品質の問題を解決するために時間をかけて検討してきたのに、最後で肝心の品質を軽視してしっぺ返しに遭ったら笑い話にもなりませんよ。