『品質でもうけなさい』6-3.因果関係を発見する
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6-3.因果関係を発見する
相関関係が把握できれば、変化の兆候が見えたときに先手を打って、不具合を未然に防止するという対応ができます。
これが統計的品質管理の基本的な考え方で、代表的な例が管理図です。
これで一件落着としても間違いではありませんが、なーんか面白くないと思いませんか?
改善というのは、もっとこう胸がワクワクするような発見があって、それが利益につながっていくから面白いんです。
それに、みなさん忙しいのに、一々管理図やグラフを描いて、滅多に起こらない工程の変化に常に目を光らしていなければならないのは、それこそ面倒だと思いませんか?
品質問題は、相関関係よりも因果関係で考えろというのが鉄則です。
つまり原因と結果の関係です。
不具合が起きている原因さえわかれば、それを取り除くことで、もう不具合が起きなくなるわけですからいちいち工程の変化に気を遣う必要はなくなります。
原因を探る代表的な手法として知られているのが特性要因図(fish-bone:魚骨図)です。
もちろん、ここでクドクド説明なんかしません。
みなさんよくご存知ですものね。
……でも、実のところ、ほとんど使わないでしょう?
ま、何かにつけ面倒臭いというのが一番大きな理由とは思いますが、みなさん、作ったけどあまり役に立たなかったというような経験があるんじゃないですか?
原因を探りたいのなら、普通に「なぜ?」の問いかけをしてみてください。
それが出発点です。別に手法なんかにこだわる必要はありません。
「なぜ?」と問いかけて出てきた答が仮説です。
文字通り仮の説明ですから、ここで慌てて結論を出してはいけません。
本当にそうなのかどうか事実を検証をする必要があります。
検証を行った結果その仮説が正しかったら、さらにその仮説について「なぜ?」の問いかけをします。
もし、正しくなかったら、もう一度「なぜ?」の問いかけをして別の仮説を設定し、再度検証を行います。
このようにして、少なくとも「なぜ?」を5回くらい繰り返せば、大体本当の原因が見えてくると言われています。
こんなふうに例示すると、なぜなぜを整理して資料を作ることみたいですが、そうではなく、こんなふうに考えながら実際に行動しなさいということです。
いわゆる「なぜなぜ分析」とか、「FTA(fault tree analysis:故障の木解析)」のように、まず机上で仮説を展開していくやり方もあります。
しかし、これらを使う場合は、アクションプランの中で検討期間をきちんと決めておかないと、資料作りだけで検証まで至らない恐れがあります。
因果関係の探求では、できるだけ多くの仮説を設定するということがとても重要です。
特性要因図やなぜなぜ分析などは、その仮説を導く手助けとして使われる手法ですが、発想を豊かに、かつ論理的に考えることができないと、なかなか多くの仮説を設定することができません。
設定された仮説は一覧表に整理し、検証方法、結果をまとめておきましょう。
下はExcelで作った仮説一覧表で、検証データの資料とリンクして参照できるようにした例です。
問題の深堀りとは、このような仮説設定と検証を執拗に繰り返すことです。
これによって問題の真の原因が見えてくるのです。
うまくすれば、新しい技術の種となる発見もあるかもしれません。
さらに、的を射た仮説設定と効率的な検証を実施するためには、社内外を問わず専門的な知見や経験豊富な人の協力を得ることが不可欠です。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
なぜなぜ分析については、やり方・進め方のアドバイスを求められることが結構多いです。まあ、コツみたいなものは確かにあるのですが、それ以上に必要なのは分析者の国語力と論理思考です。
改善活動の実態を見ていますと、こういう論理思考が、どうもみなさん苦手というかヘタクソなんですね。それを養うのは、やはり本をたくさん読むことじゃないかなと思うのです。マンガやゲームじゃ難しい感じがします。
分析という言葉に惑わされて、何かきちんとした分析ルールとかテクニックがあるんじゃないかと思っていると、かえって迷路に迷い込んで改善目的を見失うようです。悩んで悩んで全然前に進まないくらいなら、資料をきれいに作ってカッコつけるより、さっさと行動に移せって言いたいわけです。