『品質でもうけなさい』6-2.相関関係を発見する
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6-2.相関関係を発見する
不具合が起きたときある物事も決まって変化するという関係が相関関係です。問題解決の重要な手掛かりになります。
深掘りの際のポイントを4つほど紹介します。
ある機械メーカーの製造ラインでの話。
部品倉庫に保管されている金属製のシャフトを出庫したところ
さあ大変! と慌てる前に、問題を整理しましょう。
問題とは理想と現実とのギャップでしたよね。
単純に考えればサビもキズもないキレイな状態が理想で、サビまみれ状態が現実です。
問題解決はそのギャップを取り除くことなので、答は簡単。
溶剤とサンドペーパーでシャフトのサビをキレイに落として使うことにしました。
メデタシメデタシ……。
笑い事ではありません。実際にこれで一件落着にしている例が非常に多いのです。
ポイントの1は、
問題が発生した時に、ちゃんとその問題の本質を捉えているか?
……ということです。
この例の場合、下のようなロスコストが発生しています。
この会社は全く気にしないで、毎回毎回同じようにロスコストを払うんです。
問題を間違えているのは明らかですね。
サビさえ出なければ、わざわざサビ落としをする必要がないのですから、サビの出ないような保管状態が理想です。
これに対し、現状はどうしてもサビが出てしまいます。
この間にギャップ、つまり問題があります。
サビが発生するということは、倉庫内の湿気が高いのかもしれない
……そう考えて
大きな乾燥機を設置しました。
これでもうサビが出ることはない、メデタシメデタシ……
これで本当に解決でしょうか?
もし他の原因だったら余計な投資をしたことになってしまいます。
湿気が原因だとしても、そんなに大きな乾燥機が必要だったのでしょうか?
ポイントの2は、
決め付けるな。気付き(なんか変だなぁ)を大切にしろ
……ということです。
問題が発生した時、その周辺の異常に気付くことができるか?
……それが解決への糸口です。
まさに現場に行き、現物を手にして現実を捉える……
何か変わったことはないか?
特徴的な傾向はないか?
例えば、こんなことに気付いて……
と感じることができれば、問題解決の手掛りに一歩近づいたと言えます。
もしかしたら、これらの変化と不具合現象との間に、何か関係があるかもしれない・・・!
でも、まだ結論を出すのは早すぎます。
覚えていますよね、データを踏まえた3現主義(5.1)。こうした気付きを検証しなければいけません。
ポイントの3は、伝統的な分析手法(QC・IE等)をバカにするなということ。
よく、品質問題の90%はQCの基本手法で解決できると言います。
そして、分析をしたら必ず考察を加えておく。
これは決して忘れないでください。
考察は問題解決のカギとなる仮説の基になるからです。
みなさんの中には、
忙しくて時間がないから、
いちいち面倒な分析なんかしたくないと
思っている人も多いでしょう。
しかし、分析によって今までわからなかった事実が浮かび上がってくることが少なくありません。
ほったらかしでロスコストを払い続けるより、初めにしっかりと手を打ってロスをゼロにしておく方が、長い目で見れば断然お得です。
時間がないといっても、算盤や電卓片手に手書きで分析していた昔と違って、今ではパソコン1台あれば簡単にグラフや分析ができてしまいます。
最もポピュラーな Excel の基本機能だけでもかなり詳細な分析が可能です。
そこで、ポイントの4は、Excel機能やインターネット情報を有効に活用せよ……ということです。
インターネット情報の中には信憑性が疑わしいのもありますから注意が必要ですが、官公庁や公的な調査機関が公開しているデータベースなどはかなり利用価値があります。
私がよく利用するのは気象庁のホームページで、気温や湿度と品質特性との相関を調べたりします。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
品質問題の90%はQCの基本手法で解決できる……私も実感としてそう思います。実験計画法とか多変量解析などが必要になってくる問題は大抵設計絡みで、現場の問題で出会うことは滅多にありません。
だから、どんどん使っていけば良いと思うのですが、使い慣れると子供だましのように感じてあまり有難みを感じない。加えて、改善の専門誌を開くと、見たこともない最新手法がきらびやかに特集されているものだから、時代に乗り遅れてはいけないと必死になって講習会通いに精を出します。
その結果、最先端のウンチクにあふれる立派な評論家が社内に沢山育っていく一方で、実際の業務は10年前とほとんど変わっていないなんていう、妙なことになってしまうわけです。
本当に良いピッチャーは大リーグボールとか魔球なんて持っていません。直球、スライダーくらいの球種しかなく、猛練習と実戦で培った駆け引き、投球術でアウトを取っていきます。磨きぬかれた基本と創意工夫が武器なのです。