『品質でもうけなさい』5-4.成果目標を設定して公開する
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5-4.成果目標を設定して公開する
問題が見えてきたら、行動を起こす前に、問題解決の目標を設定しましょう。
いくら、人材育成がプロジェクトの大きな狙いとはいえ、目標があいまいなまま、ただ改善しろと言われているだけでは、モチベーションが上がりません。
やはり数値目標をしっかり決めるということは最低限必要です。
(1)現実的なベンチマークで目標設定
ベンチマークとは改善活動の成果の判定基準のことです。次のような3つのステップで改善活動の目標を決めます。
ⅰ.問題を定量化し問題解決の評価基準を決める
問題をデータで語ることがちゃんと身に付いていれば、定量化といっても難しいことは何もないでしょう。例えば、コスト、不良率、生産性、設備可動率など、解決しようとしている問題をどのように評価するかを決めます。
ⅱ.評価基準をモニターして現状の実力を把握する
理想と現実とのギャップを埋めるという意味で、理想の数値を目標に置いても構いませんが、あまり現実離れした目標は目標がないのと同じです。そこで、期間を決めて現状調査し、その結果をベンチマークとします。不具合データ管理のシステムがしっかり機能していれば、最近の統計を基にして決めるのが良いでしょう。
ⅲ.問題解決による効果目標を決定する
ベンチマークから、Fコスト半減とか生産性30%向上という具合に効果目標を設定します。
(2)必達目標と努力目標
上のような手順で決めた目標は、言わば必達目標、必ず達成しなければならない目標です。
しかし、満点を目指して勉強しても、せいぜい80点ぐらいしか取れないもの。努力にはこんな歩留りが付きまといますから、少し厳しいところを目指すようにするのが、上手な目標設定の仕方です。
そこで、そのような数値を努力目標とします。必達目標も併記して構いませんが、活動の進捗は努力目標の数値を基準にして管理します。
(3)目標達成期限を必ず設ける
当たり前のことですが、間が抜けて、こういう肝心なことを決めずに突っ走ってしまうと、ダラダラと締まりのない活動になって、いずれ消え去ってしまいます。
必ず目標達成の期限を設けること。
例えば、年単位で活動する場合なら1年後ということになりますが、1ヶ月程度早めを期限にして、年度締め報告の準備期間を設けることもあります。
これらは、それぞれの会社・事業所の都合に合わせるのが良いでしょう。
(4)目標と達成期限は必ず公開する
もう一つ大事なことは、目標と達成期限を決めたら、必ずそれをオープンにすること。
改善活動は、目標達成と同時に人材育成が大きなテーマです。
目標を表に出さず、身内でチマチマ活動していく中で人材が育っていくようなイメージができますか?
リーダーになる人は、達成できなかったらみっともないとか、上司に叱られるんじゃないかと、とかくマイナス思考になります。
目標を公表するのは当人にとって大きなストレスになりますが、それを乗り越えないで人は育ちません。
マネジメントがリーダーに的確なフォローを行い、勇気付けることによって、プロジェクトが動き出します。推進委員会が果たすべき重要な役割りの一つです。
この目標を、食堂や階段の踊り場など通行の多いところに貼り出して、みんなに公表します。
また、活動がスタートしたら、進捗状況を示したグラフも一緒に公表します。
さらに、プロジェクトの節目節目で適当なイベント色を出す方が活動にメリハリができますから、事務局もキャンペーンを企画・実施して、活動を盛り上げるようにします。
ただし、一般に品質改善はイベント倒れになることが非常に多いので、目的を見失わないように気をつけてください。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
目標をさらけ出すというのは、プロジェクトが成果を出すために不可欠な条件の一つです。
確かに、当事者にとってはものすごく大きなプレッシャーには違いありません。しかし、目標を周囲に知ってもらうことによって、逆に理解者、協力者、サポーターを得ることができます。それを利用して自己実現につなげることもできるでしょう。
ところが、何が困るのかわかりませんが、ときどき、お客様や外部業者には見られたくないといって、滅多に人が入らない会議室などにひっそり掲示して、紙の色が変わるまで放っておく会社があります。このような改善活動が満足な成果を出した例を見たことがありません。