『品質でもうけなさい』4-4.問題解決が人を育てる
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4-4.問題解決が人を育てる
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの対象となる組織の最高責任者が就任します。
トップマネジメントで重い責任をこなさなければならない立場ですから、なかなかプロジェクトに関わる時間が取りにくいのも仕方がありません。
しかし、実質的にプロジェクトのシナリオを描き、意思決定をし、活動を統括していく最も重要な役割りを担っています。
少なくとも、事後の姿をイメージして実戦部隊に指針を示すことができなければ、プロジェクトマネージャーの責任は果たせません。
会社の規模、活動の範囲によっては、プロジェクトオーナー(プロジェクトに投資する経営幹部)が兼務することもあります。
私の経験では、プロジェクトマネージャーが積極的にコンサルタントとのコミュニケーションを求めてくるプロジェクトは、必ず大きな成果を出しています。
コミュニケーションの中身も、指導内容などの通り一遍の報告でなく、事後イメージの具体化とか、今後の方向付け、戦略、着地点をどうするかなど、意思決定に関するディスカッションをする方が、プロジェクトもうまく動いていきます。具体的な活動報告は事務局や実戦部隊からもらえば良いのです。
プロジェクト事務局
忙しいからと言って、だれもやりたがらない事務局。
しかし、実はプロジェクトの中で
一番面白くて勉強になるのが事務局で、
二番目がリーダーです。
事務局はプロジェクトを円滑に推進するためにいろいろアイディアを出すプロジェクトの参謀的役割りも果たします。
大変は大変ですが、事務局ほど密度の濃い勉強ができるポジションは他にはありません。
問題解決の生の現場にいつも立ち会うことができるわけですし、マネジメントを学びながら内外に人脈を作ることもできます。
経営者と直接顔を合わす機会が増えて、トップマネジメントとの間にホットラインを築くこともできます。
こんな美味しいチャンスを、なぜみんな敬遠するのか首を傾げます。
確かに、通常業務のかたわらプロジェクトの企画運営・段取り・進捗管理・報告書作成などを行うのはかなりの負担になってきますから、可能ならば専任を考えるのも一つの方法かもしれません。しかし、いずれにしてもビフォー・アフターで顔つきがキリリと一変し、目もギラギラ輝いてくるのは例外なく事務局経験者です。
あなたもチャンスがあればぜひ……。
プロジェクト推進委員会
プロジェクト推進委員会は、通常業務の組織の長で構成されます。
プロジェクトマネージャーをサポートし、定期的に委員会を開催して、プロジェクトの円滑な推進と目標達成を管理する重要な役割りがあります。
プロジェクトの狙いは、生産性向上とか不良低減といった数値目標の達成はもちろんですが、それ以上に人材の育成にあります。
いくら目標以上の成果が得られても、維持・発展できる人材が育っていなければ、時を経ずして元に戻ります。
人材が育っていれば、その能力は必ず通常業務の中でも発揮されるでしょう。
プロジェクトを杓子定規に考えるのではなく、まさに有能な部下を育成するチャンスと捉えてほしいのです。
推進委員会によるリーダーへの励まし、経験に基づくアドバイス、強力なバックアップがなければ、プロジェクトは決して期待通りの結果を残すことはできません。
プロジェクトが成果を出せるかどうか。そのカギを握っているのはこの推進委員会です。ところが、推進委員会とは名ばかりで、キックオフしてから最終報告会まで一度も開催しないなんてこともあります。もちろん、こんな状態でプロジェクトがうまく行った例はありません。
それぞれが組織の責任者なので、必然的に通常業務の方に重点を起きたがります。上長の命令で仕方なく参画しているというのがホンネで、できるだけ自分の部下には負荷をかけさせたくないと考えています。
みんな同じ穴のムジナですから、挫折しても全く責任を感じません。よしんばプロジェクトに熱心な委員がいたとしても、自分の組織を最優先に考えますから部分最適になりやすいのです。
事前のコンセンサスが得られていないとか、プロジェクトマネージャーのリーダーシップが欠けているとか、いろいろな原因が考えられますが、一番大きいのは、プロジェクトのメリットを感じていないということのようです。
プロジェクトチームリーダー
事務局に次いで面白くて勉強になるのがチームリーダーです。
文字通り、問題解決の実戦部隊を引っ張るリーダーとしての活躍が期待されるプロジェクトの主人公です。
リーダーの責任は問題解決を自ら実行することではありません。リーダーの責任は、リーダーシップを発揮して、メンバーに問題解決をやらせて結果を出させることです。
プロジェクトというのは、メンバーにとっても問題解決を通して、リーダーを盛り立てるメンバーシップを学び、チームワークで結果を出して、みんなで達成感を味わうことができる絶好のチャンスです。
リーダーは大抵は、本人の意思に関係なく、上司の指示や同僚の推薦で人選されます。
ということは、それだけ周囲から期待されているということですが、本人は厄介な仕事を押し付けられたと感じていることが多いので、特に上司はしっかりフォローしなければなりません。
組織がどれだけ本気で問題解決に取り組もうとしているかどうかは、リーダーの人選を見ると大体見えてきます。
ある会社で、だれが見ても人をまとめられるとは思えないおとなしい人を選出してきたり、昨日配属されたばかりの新人をリーダーに指名してきたチームがありました。
案の定、他のメンバーは通常業務にどっぷり浸かって、問題解決はリーダーにまかせっきり。
上司のフォローもなく、だれもが予想できる結果となりました。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
60年代に大流行したテレビ番組に、コンバットという戦争ものがありました。リーダーシップというと、すぐにその主人公サンダース軍曹の名前が挙がるくらい、リーダーの見本と言われたものですが、世代が変わり知る人は少なくなりました。
今ビデオで見ても、当時は問題解決のこんな良い教材があったんだなあと感心します。
おそらく、ハリーポッターとかマトリックスとか、最新ハイテク技術を駆使した特撮映画に慣れた世代には全然受けないでしょうが、見れば得るものは少なくないと思います。