『品質でもうけなさい』2-6.品質管理のレベル
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2-6.品質管理のレベル
ちょっと概念的な話になりますが、品質コストがどのような構成になっているかを把握し比較することで、管理レベルを評価する参考になるでしょう。
不良が多発して、このままではお客様の信用も失ってしまう状態です。
この節の冒頭の例のように不良処理に追われて何もできないという状態もこのレベルです。
日本の品質管理は世界一などと言われますが、このレベルであえいでいる会社は決して少なくありません。
あなたのところはいかがですか?
このレベルでの最優先課題は、とにかくお客様に迷惑を掛けないということです。
当面の利益を度外視してでも、不良の流出を止める手立てを講ずることが急務です。
お客様からの苦情は減りましたが、評価コストが利益を圧迫している状態です。
水際の検査でかろうじて流出だけは防いでいるものの、相変わらず工程では不良が多発しています。
後述しますが、この場合の検査というのは本当の検査とは言えませんので、実質的にはレベル0と違いはありません。
最優先課題は、後工程に迷惑を掛けないということです。
後工程はお客様のつもりで不良を流さないようにしなさいという意味です。精神論的だという批判もありますが、0や1のような低いレベルの職場では、このようなモラルすら疲弊していることが多いので、大切な課題です。
設備のメインテナンスや作業者への教育訓練などをある程度実施することで検査工数を削減し、全体のコスト低減をはかった状態です。一般に品質が安定していると言われるレベルです。
しかし、実は、失敗コストがほとんど削減できていないので、品質は全く改善されていません。
このレベルの課題は、全員参加による不良低減です。
このレベル2までは、精神論だけで改善活動を進めていっても比較的楽に到達できます。
しかし、ここで停滞してマンネリ化しやすく、次のレベル3というのはひとつの壁になっていると思います。
品質改善や工程管理を強化したことで不良を低減し、同時に検査工数も削減して全体のコスト低減をはかった状態です。
レベル3が難しいのは、これまでのような精神論ではなく実質的な改革が求められていることです。
発想の転換や思い切った改革投資が必要となりますが、一般に経営というものは保守的ですから、このようなエポックにはどうしても躊躇しがちです。
レベル3の課題は、項目としては、信頼性向上や管理の効率化、新技術開発などが挙げられますが、それ以上にマネジメント力強化と改革自立化ということが重要と思います。
さらに予防コストを充実させて、徹底的な品質改善を実施し、失敗コストをほとんどゼロにした理想的な状態です。
レベル4になっても、まだまだ課題はあります。 予防コスト・検査コストをもっと圧縮できないか?
……このレベルの会社ならば、精神論ではなく合理的に解決していくはずです。それが実現できた時が真のエクセレントカンパニーと言えるでしょう。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
TQCの創始者と言われるファイゲンバウムの時代は、バランスが取れているということでレベル2のようなコスト構成が良いとされていました。
もちろん現在ではこれではダメです。
統計的品質管理一辺倒だと、このレベルが限界になってしまいます。
限界を超えるには、やはり発想の切り替えが必要になってきます。
なお、このコストによる品質管理レベルは私の恣意的な提案に過ぎません。
決して絶対的なものではなく、あくまで目安としての意味しかありません。
例えば、これを他社との比較で考えるのは、それぞれの経営条件や背景が異なりますから全く無意味です。
また、取引先評価で使おうとしても、内部コストの把握がほとんど不可能ですから難しいでしょう。
むしろ、自社内で改善を進めていく中で、品質管理のレベルアップを評価する目安として使うのが良いと思っています。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長 《補足》
トヨタが改善活動にも残業手当てを出す方針に転換したことが話題になった後、その改善活動の時間を削減していくということも公表されました。
他社もこれに追従するというようなことが新聞に載っていて、ちょっと心配になったので一言。
トヨタがやっているからといって、レベルの低い会社がやみくもに改善活動の時間を削減することは非常に危険です。
トヨタがそれをできるのは、管理レベルがすでにレベル4というレベルに達しているからです。
レベル4の課題はまさに予防コストの削減であり、それにチャレンジできるくらい従業員のレベルも高いということです。
とはいえ、改善活動を効率的に進めること自体は、レベルに関係なくとても大切なことです。
自己流ですべて試行錯誤しながらの改善ではなく、専門家やコンサルタントの指導を仰ぐ意義はそんなところにもあります。
効率的な改善については4章でお話します。