『人を動かす新たな3原則—売らないセールスで、誰もが成功する!』で力を...

『人を動かす新たな3原則—売らないセールスで、誰もが成功する!』で力を得た

私は、一般には、大企業で定年まで勤め上げた人、と見られている。

しかし、実は28歳から42歳までの14年間は、非正規雇用、自営業(フリーター?)などで数か所の職場、仕事を転々としていた。

その間2人の子供を産んだが、一度も産休、育休は取ったことがない(そのような環境にはなかった)。

 

この時期を、「孤独なキャリア形成の時期」とよんでいる。

この間、必死で技術力向上のための努力をし、自分を売り込んできた。

この時期がなければその後、大企業でITコンサルタント、企画部長、コンサルタントの育成など勤めあげることはできなかったと思う。

 

そして、この時期こそが、自分が技術者からセールス・パーソンに生まれ変われたときだと思う。

『人を動かす新たな3原則—売らないセールスで、誰もが成功する!』(ダニエル・ピンク、講談社)は、セールスという言葉にひっかかって購入したように思う。

読み始めてすぐにはまってしまった。

 

最初に、「現代人は誰でもセールスに関わっている」という章が設けられているが、私にとってはもう30年以上前に気づいていたことである。

だから、早く先に行きたい、とページをめくり続けた。

 

中心にあるのが、

セールスに必要な特質:同調、浮揚力、明確性、

そして、

セールスに必要なスキル:ピッチ、インプロ、奉仕

についての記述である。

 

これらは、各々の読み手の関心事や経験に応じて捉え方は異なるかもしれないが、取り入れることができると思う。

事例はわかりやすい。

私が感銘を受けたのが次の点である。

 

8年前、「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」という論文で工学博士の学位を得た。

その論文で主張したことは、商品(製品やサービス)の提供者は、顧客に対して商品の良い点も悪い点も含めた情報提供をすることにより、最終的には高い顧客満足につながり、継続して顧客であり続ける可能性ができる、ということである。

それを、学生を使った実験の結果を分析して示した。

 

このときは、インターネットは一般消費者に今ほど普及しておらず、SNSもなかったので、情報は企業から提供しない限り(特に先端的な商品は)ユーザには伝わらなかった。

現代は、ユーザ自身が情報を収集し、商品提供企業と同等の知識を持って購入意思決定をすることができる。

 

本書では、それを、

「買い主は気をつけよ」から「売り主は気をつけよ」へ

として論じている。

 

私が8年以上前に主張していたことは間違いなかったと、心の中で密かに拍手を送ったのである。

※2013年10月に書かれた記事です。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任