『ビジネスモデル・ジェネレーション』でどこまでできる?
大学の講師に加えて、昨年まで勤めていた会社のつながりで技術者向けのビジネス研修(戦略立案、提案)の講師もしている。
私の研修はロールプレイ中心であり、クライアントの気持ちになって自分で提案内容を評価する。
必ずのように受講生から言われるのは、「方法論を教えてくれ」「プロセスを教えてくれ」「模範解答を示してくれ」ということである。
それに対しては、「方法論は自分で見つけ出すもの」「クライアントが感動してくれるものが解答」とつれなく答える。
何かの方法論やプロセスに従えばクライアントが驚くようなビジネス戦略が出来上がるとしたら、誰もプロには頼まず自分でやるだろう。
以前から気になっていた本を遂に買ってしまった。
表紙の絵は軽いが本自体は重い。
『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書—ビジョナリー、イノベーターと挑戦者のためのハンドブック—』(アレックス・オスターワルダー&イヴ・ピニュール、翔泳社)
絵本のように、読んでいて楽しい。
ビジネス・モデルとは何かがすっと分かる気がする。
チームで新しいビジネスについて議論するのにとてもよいツールだと言える。
情報共有にビジュアル化は有効だから。
私にとってみれば、ビジネス・モデルについて頭を整理するのに役立つ書物であることは確かである。
このようなビジネス書でいつも行われることだが、執筆時点で最もイノベーティブと思われる事例を取り上げ、それがこのツールによって生み出せる、という説明をする。
本書もその例にもれない。
考えてみればわかることだが、後付けで適用してうまくいったように見えても、何もないところからそのツールを適用して同じものが生み出せるとは限らない。
また、そのツールを使わずに現に生み出されているのだから、その事例にとってはそのツールは不要ということになる。
このツールでイノベーションを起こせると思ってはいけない。
イノベーションを起こしそうな種を見つけることができた後で、それを周りの人と共有し、さらに協力者を募るのにはとても有効な手段である。
※2014年3月に書かれた記事です。