『パーフェクト・タイミング』でリケジョについて考えてしまった

『パーフェクト・タイミング』でリケジョについて考えてしまった

突然の話題だが、私はリケジョ(理系女)ではない。

確かに、大学は理学部であり、キャリアの出発点は企業の研究所だったが、それから40年以上の間に理系と文系との境界領域に進み、そこで活動を続けている。

私自身の考え方として、理系と文系の垣根は取り払われていくべきであるというもの、さらには、ビジネスの上では男性と女性の垣根も取り払われていくものと、というのがあるので、なんで今さら「リケジョ」なんて言うのか、というのが本音である。

 

もっとも、これは人のキャリアの時間軸に沿って変わっていくものであり、キャリアの一時点で認識されるものであるのかもしれない。

物理学科の修士を出てメーカーに勤める私の娘や女性の同級生はリケジョであることに誇りを持っているようだ。

30年後にはどう思っているだろうか。

 

私は、かなりゆっくりとしたキャリアの積み方をしてきた。

これは意識してではなく、そうせざるを得ない社会環境ゆえである。

しかし、様々なタイミングで意思決定を迫られることはあり、そこでの決断は結果として間違ってはいなかったと思える。

 

ペースはゆっくりであり、遠回りすることは多かったが、目標はぶれていなかった。

時間、タイミングについて色々考えているときに見つけたのがこの本である。

『パーフェクト・タイミング—最高の意思決定をもたらす戦略的時間術—』(スチュアート・アルバート、河出書房新社)。

 

タイミングというものを徹底的に分析し、パターン化し、学び方を教えてくれる。

中心となるのが、タイミング分析の6つのレンズというものである。

 

(1)シーケンス:どんな流れで物事が起こっているか

(2)パンクチュエーション:時間の流れに句読点を打つ

(3)インターバル:何がどんな間隔で起こるのか

(4)スピード:速い/遅いを的確にとらえる

(5)シェイプ:物事には起こり方の「かたち」がある

(6)ポリフォニー:同時並行で何が起こっているか

 

一つ一つはなるほど尤もだ、と思えるし、特段新しい概念とも思えない。

しかし、これらの全体を俯瞰するために「楽譜」を書き、オーケストラの指揮者のようにそれを読み取って実現する、という考え方が面白い。

これはまさに、プロジェクトマネジメントではないか。

 

確かに、プロジェクトに重要なのは時間の管理である。

それも、多数のステークホルダーとの関係を考慮したものでなければならない。

速ければいいのではない。

 

一番良いタイミングを見出して、そこで行動すべきなのだ。

それができるためには、広い視野と経験が必要である。

最初はリケジョでも、広い視野と経験を積むうちに理系と文系の垣根も男性と女性の垣根も取り払われていくはずである。

 

その過程で、世の中に価値を提供するためにすべきことや、そのタイミングが分かってくるのではないか。

 

※2014年3月に書かれた記事です。

 


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任