『ザ・ディマンド—爆発的ヒットを生む需要創出術』は思いのほか読むのに時...

『ザ・ディマンド—爆発的ヒットを生む需要創出術』は思いのほか読むのに時間がかかった

世の中にはどれほど多くの、売れる商品を世に出す秘訣について書いた本が出ているのだろう。

ある製品が爆発的に売れたのに対して、同種の製品が全く売れなかった、という対比させる例を示し、「こうだから売れたのだ」と分析してみせる。

なるほど、と思うけれど、同じことをしてもやはり売れるとは限らないのではないか、と疑問も沸いてきて終わる。

 

そんな経験が過去に何度もあったような気がする。

『ザ・ディマンド—爆発的ヒットを生む需要創出術』(日本経済新聞社、エイドリアン・J・スライウォツキー)もそんな1冊かと思ったら、語り口は柔らかく、事例のストーリーが面白いにもかかわらず、読むのにかなり時間をとってしまった。

それだけ中身が濃いということである。

 

「需要創出」だけ取り上げて、6つの法則をあげている。

 

1.マグネティック:機能面と情緒面の「魅力」が需要を生み出す
2.ハッスル・マップ:時間とお金をムダにする「欠点」を明らかにする
3.バックストーリー:「見えない要素」で魅力を強化する
4.トリガー:人々を「夢中」にさせ、購買の決断を下してもらう
5.トラジェクトリー:魅力を「進化」させ、新しい需要層を掘り起こす
6.バリエーション:「コスト効率の高い製品多様化」を図る

 

各々が、かなり実現が難しい「法則」であり、しかも6つのうちどれが欠けても「需要創出」に至らない可能性がある。

すなわち、高いハードルがたくさんあり、それをすべて見事にクリアできなければならないのである。

成功した企業に対して対比される企業が少なくても、「多分他もそうだろう」と思わせる厳しさを感じさせる。

 

市場を創る、などと簡単には言ってはならない、と思わざるをえなかった。

ビジネスは難しい。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任