「着想」と「判断」は別の場で!|元トヨタマンの目

「着想」と「判断」は別の場で!|元トヨタマンの目

1.着眼

着眼は、現状に不満を持ち、批判を行うこと。
着眼は、純粋な批判精神のみで行うべき。

着眼がなければ世の中の改善は生まれない。
したがって着眼は改善の母と言える。

「おゃっ、これはおかしいな」
自由で、独立的で、極力たくさんの着眼を考える。

この着眼のステップに着想を介入させてはならない。
なぜなら次の着想は回答であるから、着眼の批判精神を薄めてしまう作用がある。

 

2.着想

疑問に回答を与える。

「それならこうすればよいのではないか」
「ではこのような提案はどうだろうか」
「それでは、こういうアイデアを提案したらどうだろうか」

この着想のステップに判断をさせてはならない。
なぜなら着想の欠点を判断するのだから、判断と着想を同時に考えることは、着想を萎縮させてしまい、着想の出る活力の息の根を止めることになる。

 

3.判断

着想の欠点を判断する。

「あの着想は、こんな点に現実的でないところがある」
「この着想は、こんな点に欠点がある」

 

4.提案

判断をパスしたものが、実際に提案されることになる。

 

5.実行

いざ実行となると多くの現場の作業者たちを説得し、実際に動いてもらわなければならない。

人間は、理論を説明されて「理解」はする。

しかしそれだけでは絶対に実行するという保証はない。

それは「納得」して、初めて行うものである。

そして「理解」は、「理性」で行うのであるが、「納得」は「感情」によって行う。

したがって実際に実行してもらうためには、2人の彼、すなわち「理性的な彼」と「感情的な彼」との2人を説得しなければならない。

 

*日本能率協会刊、新郷重夫「生産管理の革命と工程機能の改善」からの抜粋


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。