「工場品質」を高める高付加価値化と現場指向の経営

「工場品質」を高める高付加価値化と現場指向の経営

現場では、顧客へ届ける価値へ焦点が当たっていますか?

 

1.付加価値を高めるための必須の2条件

 

東京大学教授藤本隆宏教授は、社会全体が成熟し経済全体が低成長のもとで付加価値を高める必須の2条件を挙げています。

 

1)能力構築 

2)需要創造

 

そのために、現場と経営者は何をすべきでしょうか?

 

藤本氏は、現場と工場経営者、それぞれの立場でやるべきことも指摘しています。

  • 現場ではマザー工場として「良い設計の良い流れ」を実現させる。
  • 工場経営者は現場の存続努力を会社の力とする現場指向の経営を探る。

(出典:日本経済新聞2016年1月8日)

 

2.現場で目指すこと

 

現場で目指すべきことは、価値を創り、価値を造って、価値を売る、独自の仕組みを造ることです。

顧客へ届ける価値へ焦点を当てます。

 

「生産」することだけに焦点を当てても差別化できません。

国内製造業は、同一仕様大量生産の役割をもはや担っていません。

「価値」を商売の対象とするのです。

 

中国の現地メーカーのロボットの使い方から国内製造業が目指すべきことが読み取れます。

 

安川電機の小笠原浩社長は次のように説明しています。

 

中国メーカーは、導入したロボットの稼働効率を優先したシステムを構築します。

ロボットが本来得意とするのは、同じ作業の繰り返し。

日本の工場では、頻繁に段取替えが発生しますが、大量生産を志向する中国工場では、同じ動きを繰り返す作業が多いので、そこにロボットを使っています。

(出典:日経ものづくり2016年5月号)

 

同一仕様の大量生産で得られる「価値」は機能に見合った価格、つまり「安さ」です。

多くの人が手にしたいと考えている製品を大量に製造します。

量産効果でコストを下げて手頃な価格を実現し大量に売る事業モデルです。

 

国内でのモノづくりでは、この事業モデルは卒業済です。

多様なニーズに対応する開発的な要素を含んだ生産活動を磨き上げます。

「価値」に焦点を当てたモノづくりが、国内モノづくり現場の生き残る方向性です。

 

価値を創り、価値を造って、価値を売る、独自の仕組みを造ることです。

 

マスカスタマイゼーションは目指すべき事業モデルのひとつです。

現場的には、多様なニーズに対応しながらも、コストは最小化にする工夫を考えます。

あるいは、短納期を磨く道もあります。

 

生産性向上は、昔も今も、現場での永遠の課題です。

ただ、目指すべき生産性の質が、変化していることを、現場全体で認識しなければなりません。

同一仕様の製品をひたすら早く造る時代は過去のことです。

今は、多品種で単能機が求められます。

 

従来のような自工程内だけの努力では成果は得られません。

前後工程との連携、全体最適化の視点が必要です。

 

皆さんの現場を振り返って下さい。

従来通りの製品を、従来通りのやり方で製造していないでしょうか?

 

危機感を持って、「変える」ことです。

価値を造る現場へ、変化させます。

現場を存続させるためには絶対に必要な取り組みです。

 

現場は、企業の一部でも地域の一部でもあり、企業の利益確保と地域の雇用確保という2つの目的関数を持つ場所的存在だ。

(出典:日本経済新聞 2016年1月8日 東京大学教授藤本隆宏氏)

 

地域雇用確保の視点に立てば、モノづくり現場は、地域で存続しなければならない役割も担っています。

 

3.経営者が目指すこと

 

高成長時代では、以下の儲けの公式が成立していました。

生産性向上=需要増への対応=付加価値額分だけ利益増

 

しかし、昨今は成熟した時代です。

需要増が見込めない場合も多くなっています。

生産性向上の目的は、変化しているのです。

 

これから中小製造現現場で取り組むべき生産性向上の質も変えます。

「価値創出」のための人材や時間を生み出すのです。

5年先、10年先にどのような姿になろうとしているのか、現場へ見せます。

生産性向上に取り組む必然性を現場へ伝えるのです。

将来への不安は消え、頑張ろうという前向きの気持ちが生まれます。

見通しを現場へ提示することは極めて重要です。

 

4.工場の品質を高める

 

顧客へ届ける価値に焦点を当てた生産活動に気付いた現場の質は確実に高まります。

生産活動自体の品質が上がるのです。

 

製品という「モノ」に留めず、納期を始め無形の「コト」に焦点を当てると工場の存在自体の品質も問われます。

ですから、顧客へ届ける価値に焦点を当てた生産活動は重要です。

会社にも、工場にも、品質があると考えて、あるべき仕事のやり方を示しながら現場の品質を高めます。

トヨタウェイやコマツウェイが有名です。

 

経営者は将来を語り、目指すべき姿を示しながら現場を大いに支援します。

現場と経営者の一体感が高まります。

弊社がご支援で重視していることです。

 

  • 現場は顧客へ届ける価値を高めることに挑戦する。
  • 経営者は現場指向の経営を実践する。

 

両者が相互作用を及ぼしながら、「工場」の品質を高めます。

 

日本の現場指向企業の多くは、「売り手よし(企業の利益確保)、買い手よし(顧客満足の創造)、世間よし(地域雇用の確保)」の三方よしの論理を理解しており、これは隠れた強みだ。

この文脈では、人を大事にしない企業こそが時代遅れだ。

(出典:日本経済新聞 2016年1月8日 東京大学教授藤本隆宏氏)

 

つまり、「工場品質」を高めるのに、現場のやる気を引き出すことがカギとなります。

「人」に重きを置くことが、時代に取り残されないための視点のひとつなのです。

 

「工場の品質」を高める仕組みをつくりませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)