「トヨタ自動車が発明の報酬額の上限を引き上げ」など【知財ニュースまとめ...

「トヨタ自動車が発明の報酬額の上限を引き上げ」など【知財ニュースまとめ】

トヨタ、発明への意欲向上狙う 報酬2割増、最大215万円

特許を取得するためには「特許を受ける権利」が必要です。特許を受ける権利は、基本的には発明者に発生する権利ですが、他人に譲渡することも可能です。

また現在、社員が職務上した発明(職務発明といいます)の特許を受ける権利は、一定条件の下で会社に発生させることができます。

例えば、社員がした発明についての特許を受ける権利を会社のものとするかわりに、社員には、発明の対価として報酬を支払うこと等が職務発明規定に定められていることが条件となります。

 

記事では、トヨタ自動車が、発明の報酬額の下限を引き下げ、上限を引き上げる等の調整を行っていることが紹介されています。

発明に対する報酬の幅を広げ、社員の発明意欲を高めることが目的のようです。

『中日新聞』(2016年12月6日)

アップル特許訴訟、サムスンに賠償減額の可能性 米最高裁、455億円分の審理差し戻し

アップル・サムスンの訴訟合戦の続報です。記事で紹介されている訴訟は、アップルがアメリカで保有しているデザイン特許の権利をサムスンが侵害しているとして、アップルが提訴したものです。

なお、アメリカのデザイン特許は、日本における意匠権に当たる権利です。

また、知的財産権の侵害訴訟では、一般的に、大きく次の2つが争点となります。

 

(1) そもそも権利が侵害されているか

(2) 権利を侵害されている者による権利行使をどの程度認めるか

 

今回の訴訟は、(1)の争点、アップルのデザイン特許の権利がサムスンによって侵害されていることについてはすでに認定されています。

そして、(2)の争点、デザイン特許の権利を侵害されているアップルによる損害賠償の請求がどの程度認められるかが、まだ決まっていない段階です。

前の控訴裁判所の判決では、サムスンがアップルに支払う賠償額について、3億9,900万ドルとの判断が示されました。これに対し、サムスンは賠償額の算定方法等の見直しを求めて米連邦最高裁判所に上訴していました。

 

そして今回、米連邦最高裁判所によってサムスンの主張が認められる判決がなされ、控訴裁判所へと差し戻されました。

アップルのデザイン特許はスマートフォンに関するものであり、その角が丸いことにデザイン的な特徴が認められているようです。

そして、米連邦最高裁判所では、現状の賠償額の算定方法では、全体のうちの一部に特徴があるデザイン特許の侵害にしては賠償額が高額になりすぎていると判断されたようです。このため、最終的には、サムスンの賠償額が減額される可能性が高いでしょう。

『SankeiBiz』(2016年12月8日)

医療情報サイト非公開 信頼性疑問、都も問題視

DeNAが医療情報サイト「WELQ」をはじめ、運営するキュレーションサイトを次々と非公開としたことで話題になっています。

記事では、WELQが医薬品医療機器法(旧薬事法)に抵触するおそれがあることについて紹介されています。

さらに、非公開とされたキュレーションサイトはいずれも、著作権法上の問題があります。

 

例えば、他人の著作物である記事や写真などを勝手に複製、変形することは著作権(複製権、翻案権)の侵害になります。

また、複製を行った者は著作者ではありません。そして、著作者ではない他人が、あたかもその著作物の著作者であるかのように表記することは著作者人格権(氏名表示権)の侵害になります。

ただし、すでに公表されている著作物については、一定条件の下、引用して利用することが可能です。

『毎日新聞』(2016年12月1日)
http://mainichi.jp/articles/20161201/k00/00e/040/131000c

新海誠作品の無断使用で物議「写真をアニメ風に加工」アプリ「Everfilter」配信停止 東宝が配信停止を要請

記事では、映画「君の名は。」の背景の一部を無断で利用していた写真加工アプリEverfilterが配信停止となったことについて紹介されています。

この写真加工アプリについても、著作権の侵害が問題となり、配信元の謝罪・アプリの配信停止となりました。

『ITmedia』(2016年12月8日)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/08/news072.html

中国で「千葉」商標登録出願2件で千葉県の主張認められる

中国で「千葉」の商標について5件、いずれも第三者によって商標登録出願されていました。

記事では、これら商標登録出願に対して千葉県が異議申し立て等を行っていること、5件のうちの2件については千葉県側の主張が認められ登録を阻止できたことについて紹介されています。

以前、当サイトでも和歌山県や岡山県が中国で商標登録出願されてしまったことを紹介しました。

 

和歌山県や岡山県の事例でも、今回登録を阻止できた千葉県の事例が参考になるのではないでしょうか。

『産経ニュース』(2016年12月7日)
http://www.sankei.com/world/news/161207/wor1612070021-n1.html

東京ニセモノコレクション

現在、特許庁が実施している「模倣品・海賊版撲滅キャンペーン」に関連して、12/18(日)に渋谷109で「東京ニセモノコレクション」が開催されます。

まさか特許庁がパロディネタ!? と思われるかもしれませんが、他にも東京ウォーカーとコラボして「Tokkyo Walker」(特許ウォーカー)を発行するなど、特許庁は意外にもパロディに対して積極的です。

「東京ニセモノコレクション」では、ブランド品等の本物と偽物が並べて展示されるようです。また、偽物を見破る方法の紹介やクイズもあるようです。

 

興味のある方、目利きに自信のある方は、同コレクションに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

『特許庁』(2016年12月1日)
http://www.jpo.go.jp/mohouhin/28fy/campaign/

まるでSF! デジタル錠剤を飲ませて細かなサービスを提供するサービスの特許を英大手航空会社が申請

記事では、航空会社ブリティッシュ・エアウェイズが一風変わったサービスシステムを特許出願したことについて紹介されています。

出願されたサービスシステムの内容は、乗客にセンサー入りの錠剤を飲ませ、そのセンサーから検出される乗客の体温や胃酸などの検出値に基づいて、食事を提供するタイミングやエアコンの調整を行うものです。

現在ではセンサーを体内に入れることに抵抗のある人が多いと思いますが、近い将来では当たり前になっているかもしれません。

『IRORIO』(2016年12月2日)
https://irorio.jp/sophokles/20161202/369058/

出典:『「トヨタ自動車が発明の報酬額の上限を引き上げ」など【知財ニュースまとめ】』開発NEXT


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。