連載小説『改善提案名人に挑戦!』第2話ナクス作戦(4)「なぜ?」と「ほんと?」にゃかなわない
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第2話 ナクス作戦
(4)「なぜ?」と「ほんと?」にゃかなわない
さて、上杉君のラインに、高校を卒業して入社したばかりの黒田さんという女の子がいる。
配属されて間もないので、もっぱら一年先輩の竹中さんにくっついて仕事を教えてもらっている。
今日も外観検査のやり方を教わったところだ。
「クロちゃん、空のPTボックス持ってきてちょうだい」
「センパーイ、PTボックスってなんですかぁ?」
そばにある現物を指さして、
「ああ、こういうプラスチック製の箱のことよ」
「センパーイ、なぜPTボックスって言うんですかねぇ」
「みんながそう呼んでいるからよ。よくわからないわ」
……クロちゃん、納得のいかない表情。
「どこにあるんですかぁ」
「えーっと、どこかに空いているのがあるはずよ。探してきて、お願い」
「はーい」
しばらくして、空箱を持ったクロちゃんが戻ってきた。
「センパーイ、なぜ空箱をまとめておかないんですかねぇ」
「使いっ放しなのよね、みんな。さ、この品物を箱に入れてちょうだい」
作業台の上の仕掛品を箱に詰めだした。
「センパーイ、なぜ箱を使ったら片付けないんですかねぇ」
「……きっと、場所が空いてないのね」
「ほんとにぃ? あちこち空いている場所ありますよぉ」
「うーん、場所が決められてないからよ、きっと」
「なぜ決めないんですかねぇ」
「別に決めておかなくても仕事に差し支えないからよ」
「ほんとですかぁ?だって、空箱を探すの、結構時間かかりますよぉ」
「慣れれば速くなるわよ」
「でも、決めておいた方がスッキリするし、探す手間も省けてもっと速くなりますよぉ」
「うー、よくわからない」
……またしてもクロちゃん、納得のいかない表情。
「……センパーイ、なぜ箱に入れるんですかぁ?」
「箱の中に入れておけば、1回で仕上げラインのところに持っていけるから楽でしょ?」
「ほぉんとですかぁ? でも、これ全部入り切らないから、もう一度残りを取りに戻らなくちゃならないですよぉ、面倒だと思うけどなぁ」
「……ねぇセンパーイ」
「もーいやっ」
竹中さんは、クロちゃんが苦手である。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)