連載小説『改善提案名人に挑戦!』第2話ナクス作戦(3)それ本当に必要なの?
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第2話 ナクス作戦
(3)それ本当に必要なの?
ナクス作戦は、口で言うのは簡単だが、これが意外に奥深い。しかし、やればかなりの効果が期待できる。その攻め方を研究してみよう。
いつものように上杉君、仕上げ工程の一員として作業している。このラインでは、品物をて送りするために各作業場所の間に台が設置されている。たとえば、前工程の北条さんが作業を終えると品物をその台の上に置き、上杉君はその品物を取って作業するといった具合だ。
さて、今日は手がかかる特殊品が流れていて、標準品と比べると一人一人の作業時間もバラついているみたいだ。
こんなとき標準品と同じように自分のペースで製品を流してしまうと、後工程が追い着かなくなって仕掛品がだんだんたまってくる。
「北条さん、もうちょいペースを落としてくれない?」
「あら、ごめんなさーい」
とは言うものの、なかなか台の上の仕掛品はなくならない。
どうしたら良いのだろう? もちろん、ライン全体の作業のバランスが取れていれば問題はないのだけれど……。このままだと、台はただの仕掛品置き場になっている。
そもそもこの台はなんのためにあるのだろう……?
この台は仕掛品を置くためにあるのか?そんなばかな。それでは、作業ペースを調節するためにあるのか?それならこんなに大きな台でなくても良いはずだ。
ただ工程のつなぎに使っているのでは? だとすれば、それぞれの作業場所をもっと近づけて、作業後品物を直接次の作業台に置いても良いじゃないか。そうすれば、こんな台なんていらないぞ。
ピンポーン! 正解正解。
台をなくすことによって、ラインもコンパクトになって人の移動距離も減り、となりが遅れているときは手伝えるようにもなるし、置き場所がないから余計な仕掛品は作らなくなる。
「改善のネタ、めーっけ」
という上杉君の声に北条さんは目をパチクリ。
ナクスときの最初の着眼点は、このようにその目的をはっきりさせることだ。
同じようにして、普段そこにあるのが当たり前と思っているものについて、なぜそれが必要なのか、その目的は何なのかをみんなで話し合ってみよう。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)