連載小説『改善提案名人に挑戦!』第2話ナクス作戦(2)なくしちまえ!
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第2話 ナクス作戦
(2)なくしちまえ!
せっかく、順調に提案件数が伸びてきているのに、改善テクニックなんて面倒臭そうなことを言ったら、また元通りのなにも言わないラインになってしまう。あんまり上杉君は乗り気ではない。
そんな気持ちを無視して織田課長はしゃべりつづける。一体、課長の残業仕事はどうしちゃったんだろう?
「なんでもかんでも0.1秒ではなくてだね、こんなふうに考えると、なんというか効果的な改善につながる。そのポイントが4つあるんだよ」
いい加減にしてくれないかなぁ。ボクももう帰りたいんだけど。
「その第一番目がナクスということなんだ」
なぁんだ、そんなこと当たり前じゃないか。つまらないこと言うなぁ。
「普段当たり前と思っていることをもう一度見直してごらん。実はなんの意味もなく、以前から行われていたから引き続きやっているということが結構多いんだ。そのことに対して、なんというか意外にみんな疑問を感じてないんだね。作業だけでなく、物でも同じ。今使っている作業台や工具が本当に必要なのかどうか」
「……あのう、課長、残業の方はいいんですか?」
「えっ?」
と時計に目をやる織田課長。
「ホイ、もうこんな時間か。いやぁ悪いなぁ、ホントに申し訳ない。この話の続きはまたにしてくれないか。ホントにごめん。とにかく、ナクスっていうところに気を付けてみてくれないか」
ようやく、解放された上杉君。玄関のところにいた営業所の近松君と一緒に駐車場に向かって歩きだした。
途中、古い小屋があって、その脇を迂回しなければならない。
「ジャマくさ、このボロ小屋。一体何に使っているんや?」
「ああ、以前は開発課の実験室だったのが、今は不要品の物置になっているらしいよ」
「ほんまに必要なもんは置いてないんとちゃうか?」
「さあ。でもあまり人が出入りしているところは見たことないね」
「なんで放ったらかしにしてあるんやろ?なくすこと、考えへんのかいな……」
「……!」
まてよ、ナクスか。これは単純だけれど、改善提案のネタにも使えそうだぞ。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)