連載小説『改善提案名人に挑戦!』第1話チリツモ作戦(5)共同戦線を張るべし
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第1話 チリツモ作戦
(5)共同戦線を張るべし
武田課長によれば、流れ作業が行われていない斎藤君の職場でも同じ手を使って、成功したのだという。
「それはだな、改善はひとりでやるな、ということだ。
きみがいくら0.1秒の改善を進めようとしても、きみの目で見える範囲には限界がある。
ましてや、ライン全体を見ようとしてもそんな余裕ある?」
それは当たっている。実際、サブリーダーとはいっても、現実にはラインの中に入って作業しなければならないのだから、実質的には作業者と同じだ。忙しくて頻繁に改善提案なんか出せるわけがない。
「だけど、1つくらいの提案ならなんとかなるな」
「はぁ、そりゃまぁ……」
「それをみんなに出してもらう。
いいか、0.1秒の改善というのは1人で提案しても大して効果はないが、ラインのメンバー全員で出せばこれはばかにできない。
きみのところだったら6人いるから、まず、
0.1×6=0.6〔秒〕
の改善を進めよう。
それをもっと広げて係全体にすれば20人、工場全体にすれば70人で共同戦線を張ることだ。
それだけでもう、4万4千円の70倍で300万になる」
「……」
「それから0.1秒なんてケチケチしないで、もっと大儲けできるところが沢山あるぞ。
たとえば、作業台の横に置いてある部品に手を伸ばすのに0.5秒かかっている。
それから、一歩足を踏み出すのに0.6秒、立ち上がったり座ったりには4秒もかかる」
そう、手元の物を近くするだけでなく、作業台や装置と台車の位置、作業場所と棚との距離というふうに職場全体でとらえても、同じことがいえるのだ。
また、立ち作業・座り作業の是々非々を議論するよりも、立ったり座ったりの動作をなくすためにはどうするかを考えることが大事なのである。
いずれにしても、それらのごく身近な改善をみんなでやれば、相当の効果が期待できることは間違いないようだ。
「……理屈はわかりました。でも、僕がその音頭をとるなんてできないです」
「もちろん、それはオレの役目だがね」
「それと……もう一つ問題があると思うんです」
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)