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講師と会食、研修内容の良/否を管理者がつかむ?

講師と会食、研修内容の良/否を管理者がつかむ?

これは、CさんがA社にお邪魔したときの話です。

内容は現場改善研修の打ち合わせですが、P社の重要課題をお聞きして内容が決まった後、いよいよ研修会が始まる時になりました。

Cさんが研修会場を訪れると、あれほど熱心に話されていたトップの方はご出席がなかったわけですが、事務局の方も全く出席されず、先生任せの研修として実施されたわけでした。

 

C先生、当然、それだからといって研修の内容を変えたり、落としたりはしません。

生徒の方は大変に熱心であり、一生懸命に研修指導に相努めたわけでした。

研修は1日のうち7割はCさんが用意したメニューに従い、講義と演習、その後はその会社のテーマ、すなわち、実務課題を中心に解決策を検討願い、明くる日は現場へ出て、更に事実を分析して改善を進めるという内容でした。

 

生徒の方々の取り組みを見ていると、学んだことを熱心にメモして、演習も積極的であり、是非この姿をその企業の関係者に見ていただきたい、という内容でした。

「是非、研修の状況をこの企業のトップの方々に見ていただきたい」と言うと、Cさんの研修内容を自慢したいから? と誤解されそうですが、Cさんは、生徒の方々の目の輝きや取り組みの内容が、まだ研修を受けていない方への広がりの際に役立つという内容と、研修に取り組む部下の状況把握が今後その人を育てて行く上できっと役に立つ、と思ったわけでした。

 

このような状況だったため、生徒の方々に「いつも研修は先生任せですか?」とお聞きしたところ、

「あまり、重要視していないみたいです。結果さえあがれば良いみたいです。私たちの状況を見ていないことで、話がチグハグになり、かえって改善の目的や条件のお願いをするのですが、いつも苦労しています。

上の人もこのような新しいやり方を平行して学んでいただくべきですよ! 特に今回は、会社にとって重要な問題を討論しているわけでして……」と不満を聞いてしまいました。

 

「いつも、こんなに熱心に研修されるのですか?」

「ハイ、自分のためになる研修の場合は……」

「では、今回は皆様のニーズに合っていたわけですね、それは良かったし、有り難うございます」

 

このような雑談は3時の休憩で行った内容です。

 

いよいよ研修が終わり、控え室に戻ると、「先生よろしいでしょうか? 遠地からのご来講ですので会食の席を容易しております。今日の先生の評価をお聞きしたいと思いまして……」という話が出ました。

Cさんも筆者同様、大体はこのような内容は事前に打合せし、5回に1回程度にしていただいています。

しかし初めてのこと、親睦を深める対策も必要と考え、この場合には了承して会食へ向かうことになりました。

 

Cさんによると、「いよいよ会食の時間になったが、この会食では、講義内容に対する質問と、生徒の態度、評価に対する質問が殺到しました。

私は、一応はお答えしたが、答えている内に段々と腹が立ってきました。勿論、顔には出しません。失礼の無いようにお答えしたつもりです……」と話されました。

会話は次の通りだったそうです。

 

「今回の研修は、従業員のやる気づくりにつながれば良いのですが、先生の指導のポイントはこの点についていかがですか?」

「やる気づくりですか、確か、仕事の改善が目的で研修をお受けしたわけですが、やる気が起きるのは、仕事の目的、目標、意義がハッキリしていて、上長が成果を認め、褒め、育てる体制があって研修でやる気が出るように思います。

今回、生徒の方々の活動を見ていますと、皆、目が輝き、しかも、成果が出るような状況ですのでやる気充分とみました。私の考えは、仕事を通して、研修の場で改善対策の方向が見いだせた時にやる気が起きて来るように思います」

 

「先生、生徒の中に居眠りやダラリとしたものはいませんでしたか?

この前もある先生にお願いしたのですが、途中で生徒に喝を入れていただいたのが、良かったと言う話をお聞きし、我々は良い指導だったと思った次第です。そうだったよな! A君」

「かなり大きな声でどなられたので生徒もピリッとしたと言っていました」

 

「そうですか? で、どの程度の効果が後であったのですか?」

「効果はともかく、外部の先生から言ってもらうと刺激になります。我々が言っても当たり前になっていることが新鮮に聞こえるわけで、外部の先生をお願いする意義はここにあると感じているわけです」

 

「そうですか、仕事の成果と共に人は育つと考えていましたが、大きな声で怒鳴る刺激を期待されていたわけですか。

私を人選されたことは問題だったかも知れませんね、私の考えは大人の方々を研修しているわけで、叱りつけても本人の自覚がなければその場しのぎに終わると思うのですが、それには、日頃、ご指導されておられる上長の働きかけが大切であると考えます……」

「イヤー手厳しいお話だ、我々がしっかりしなければいけないわけか?」

 

「ところで、研修の成果はどのようにフォローされておられるのですか?」

「先生のコメントと上長からの評判で判定しています」

「生徒の方々の研修内容のフォローはされないのですか?」

 

「主だった人には研修の感想を聞きますが、上長にフォローさせる方式です」

「そうですか、それは実務的で良い内容ですね……」

「ところで、今回の生徒の様子はいかがでしたか、例えば、Bグループですが、問題の人達なんですよ。いつも研修態度がよくなくて……」

 

「Bグループですか? どこに座っておられましたか?」

「部屋の右端の位置です」

「特に他のグループと変わりはなかったです。大変に熱心に研修を受けておられましたし……」

 

「先生、もし、態度が悪かったら叱ってください。また、我々にその状況をお伝えください。私の方からも注意しますので」

「はい、でも私が見る限り、貴社の従業員の方々は熱心で実力も高い状況だと思います。

明日、改善の取り組み内容を発表会で公開しますが、今の取り組みを拝見していますと良い内容であり、是非生徒の方々を褒めていただきたい内容になると考えますが……」

 

「そうですか、では、時間を作って……」という話が延々と続いた次第でした。

しかし、この方々、結局は発表会にも参加されず、退社するとき、景品を持ち挨拶に来られ、「ありがとうございました。また、お願いしたいと思います……」で失礼となったわけでした。

このような調子でまたC先生は翌年研修会にご招待を受けた次第でしたが、状況の変化は全く無い状態でした。

 

一般に研修の先生は、研修に呼ばれ綺麗ごとを言われても、内容が悪ければ2度は招待されない状況です。

企業が招待した先生に直接文句をいうのはよほどのケースで、悪い状況が発生した場合に限られます。

一般的には、先生に対する拒否権は「2度と呼ばなくする!」というのが業界のルールのようなものです。

 

このことから考えると、P社における前回の研修の内容は良かった内容である、ということになるようです。

しかし、研修形態が、先生一任、事務局参加なしの状態、生徒と上長の評判だけで、研修を受けた方々をどのように指導して行かれるのでしょうか? 夜の交流を加えても私は理解に苦しむ次第です。

今回の内容は、1年に1回、しかも会社の方針に重要なテーマの推進のようでした。

 

私が企業にいた時は、管理者も共に学び、共にテーマを進め、自分が学びつつ成功談をつくり、教えられた内容を自分なりに理解してから広めるという手段を取っていたため、テキスト作成や準備に手間がかかりました。

時には、先生はあまり上手な指導でなくても、企業にとっては大事な内容なので、たとえ先生の評判が悪くても、それと関係なく事を進めていった例があります。

今回は2回ともこのような内容に近い手法の投入でした。しかしこの企業の管理者の方々の対応は、生徒からの評判の収集と夜の会食だけでした。

 

この企業には何か上手に生徒の方々を引っ張る方法があるのかも知れないようですね?

しかし、私はこの種の内容は好かないため、研修生の方々には残念ですがお断りとしましたというお話でしたが、この種の内容に筆者も時々遭遇します。

全く奇妙な内容なので、ここに紹介しました。

 

さらに、Cさんが語られた内容を紹介します。

これは歓迎すべき内容で、P社とは全く正反対の内容であり、読者の皆様のご参考になればと考えます。

 

「中村さん、聞いてください。P社とは全く逆のS社のケ-スがあります。

我々からすれば、社内研修で十分、といったような内容の研修、下の方に任せておけば良いような指導内容に、研修のお呼びがかかり、しかも、トップ自身が参加され、熱心に取り組み、演習会にまでは参加されないが、生徒の取り組みを見ながら、今後の運用などに関してもいろいろと質問される企業のトップの方もおられます。

このような時、こちらも意義を感じて行うわけですが、このような企業の場合、研修の内容を私が考えている以上に活用され成果をあげるのが一般的です。

 

あまり大きな声では言えませんが、私が教えた方が講師となり、頑張っていただく対処へ向けますが、後日、質問や相談を受け、逆に教えられる内容が多く、うまく講師を活用されているな、と思う例ばかりです。

先般もある企業でご招待を受けましたが、その会社でも、S社の社長様ご自身がJMAの私が担当の研修会に参加されました。

しかも自動化の研修会でありマネジメントの研修ではなかったわけですが、私としては、講師が試験を受けているような状況で研修は進みました。

 

この会社の社長様自体、他の生徒と差がなく研修を受けられ、研修の後、お話があり、ご出席された別の研修の講師依頼を直接されたわけでした。

私は、早速、ご期待に添えるように準備をして研修に臨んだわけでした。

なお、研修の内容は品質改善であり、現場指導をしながらの研修でしたが、終始付きっきり、私が発言すると補助的な説明を加える形で実務研修が終了しました。

 

その後も『フォロ-アップに来てください!』とのことで、当然のことながらお邪魔したところ、期待以上の効果が出ていました。

研修の内容を企業内で幅広く展開されたことが、そのような成果現出につながっていたわけです。

『人材育成は重要!』ということは皆同じようにどこでも話されます。

 

しかし経営トップが自ら方針を定め、研修を使いきるという企業は少ないように思います。

この種の取り組みには頭が下がる感です。先のP社との差が大きく出ることは言うまでも無い内容だと思います……」というお話でした。

コメント

Cさんが語られたお話は企業研修を担当する私もよく経験する内容です。

「なぜ研修をするか?」という時、アウトプットの検討を十分お願いしたい内容です。

人材育成と実力向上の内容が具体的でないと(経営目標や課題に対して具体的な位置づけと定めた目標の達成内容や貢献度がフォローと共に無い対処は)、研修生の刺激や何らかのムードづくりにはなっても、経営効果が出ないからです。

 

特に、外部機関に依頼する研修については、要求した内容が的確に果たされていくか? また、学ぶ方がキーパーソンとして活動できる内容になっているかを、少なくとも事務局が把握して経営トップに伝える役割があると考えます。

それを、P社のように研修後の会食で探る方式では、依頼した講師の立場にからんだ話を聞くだけになるからです。

また、研修生にアンケートする方式があります。

 

しかし、この種の多くのものは、講義内容や研修メニュー、講師の対応の良否を問うものであり、よく見れば、この種のアンケートは事務局が招待した講師評価の域を出ない対処が多い状況です。

要は、講師を呼び、研修を実施した事務局の準備内容を問うたアンケートなので、アンケートが悪い場合、「事務局の講師選択ミス」を示す。

逆に、評価が高い場合は「事務局の選定良好!」となるわけで、「この種のアンケートは事務局の立場やアリバイづくり」とされる理由が、読者の皆様にはご理解願えるのではないか? と思います。

 

研修はアウトプットを持ち行うべきです。このため、「フォローアップの無い研修は教養番組!」と言われてきました。

Cさんはこの面で優良なS社の例を示されました。

更に、その内容をお聞きすると、

 

①研修前に研修生を集め、経営課題とアウトプットを整理した後、研修への出席者を決める

②課題を研修に持ってきて、習いながら具体的解決策をさぐる。同時に、経営の重要課題なので、その対策手法の指導と修得内容をトップ自らチェック~研修時に盛り上げを図る(時には講師に注文を出す)

③生産という実務を持つ中で研修を行う関係上、研修への出席者は、受講~修得した手法を実践展開~全社へ波及する役目を持つ……という内容があり

 

④各種課題の解決へ、研修の内容を利用して、効率や有効性を高める

⑤フォローアップ研修を最初から用意しておき、その目算が研修と共にイメージできる

という対処をなされていたそうです。

 

この種の対応は研修をお受けになられる企業の環境整備に関する内容ですが、企業研修に必須事項と考えます。

研修の位置づけと経営(モノづくりの課題解決)の明確化を図ると、『人づくりはモノづくりの基本!』という内容として明確化します。

また、このように研修のあり方を見ると、P社の研修の扱い、すなわち、Sさんにムード的意見聴取をする行為がいかに無意味な内容であるかが明確になると思います。

 

この種の行為が企業に多く見られるのは、多分、人材育成に対するウエイトと研修する内容の重要度、また、バブルの時代に付け足しのように研修を行った企業の体質や歴史が関与するのかもしれません。

P社のような例は筆者も経験があります。第2回目のご依頼は上手にお断りします。

この種の研修対応は、「講師が失業対策の目的で金儲けに行くだけの行為となる」と考えるからです。

 

なお、この種の研修を進める事務局の方々は自社の研修受講者のアウトプット評価に手間を惜しみ、不思議に講師の世間的評価に関する情報を集め、「何か画期的手法は無いか?」「従業員に刺激的なカンフル剤はないか?」といって新たな手法の捜索に努力されているご傾向があります。

当然のことですが、実力の無い私としては「もう、隠し技はありませんので…」とご協力をご遠慮申し上げてきた次第です。

 

この種、P社のような例は別として、Cさんが関与したS社のような例を筆者も経験談として持つので、簡単に紹介させていただくことにします。

例はPCを中心とした小型部品製造メーカM社の事例です。

 

後日、M社の社長に就任されたM専務様が「研修の相談に来て欲しい」ということでM社で打ち合わせとなりました。

対象は次期・工場長クラス20名×3回という内容で、講師として招待されるまでに筆者の研修に対する取り組みや成果などを実に良く調べられていたことに、先ず、筆者は驚嘆しました。

事務局がこの任に当たったそうです。

 

ご要求は、

「①研修の題材は当社の経営改善とする。②未来を企画する課題を持たせる。ついては、③当社の事情と要求を今から解説するので、あなたは、どのような技術的メニューを教育内容として提供できるのか? を、私の説明の後、示して欲しい」

というものでした。

 

まさに筆者はこの面で試験を受けているわけです。

お話をお聞きした後、

 

(1)BS・PLと各種活動の関連を明確化する

(2)工場診断法と一流企業のベンチマークと事例を示す

(3)品質・納期対策に対する内容と現場管理者の活動のあり方を具体的にチェックする内容を提供する、としました。

 

これで、都合、海外工場トップの参画~新製品開発関係者を追加した7回も研修を進めました。

第1回はM専務様がつききりでご覧になられ、注文もいただきつつ進んだわけですが、この方々の活動で経営数値が大きく動く体験が続きました。

同時に、筆者は

 

①トップ指導下にある研修の価値

②選ばれた人材と活動力

③投入する手法と事例の的確化

を大きく学んだ次第です。

 

当然、受講生は現在、経営の中枢でご活躍です。

なお、このような研修に出合うのは、過去3~4年に1回程度でした。

しかし最近、この種の要求が多くなってきたことに、筆者は「実務課題解決の役立つ人作り」の重要性が増してきたように思います。


昭和45年から平成2年まで、日立金属㈱にて、全社CIM構築、各工場レイアウト新設・改善プロジェクトリーダー、新製品開発パテントMAP手法開発に従事。うち3年は米国AAP St-Mary社に赴任する。平成2年、一般社団法人日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を担当を歴任する。(有)QCD革新研究所を開設して活動(2016年有限会社はクローズ、業務はそのままQCD革新研究所へ移行)。 http://www.qcd.jp/