言葉の力を信じ想いをシンプルに繰り返し語る

言葉の力を信じ想いをシンプルに繰り返し語る

想いをシンプルに繰り返し伝えると、現場へ浸透しやすくなる。

経営者や現場リーダーは「言葉の力」に注目する、という話です。

 

1.言葉の力

総計50名程度の現場を管理していた頃、現場のへの情報伝達で必ずやっていたことがありました。

それは、業績の話と合わせて安全衛生の話を必ずセットで伝えることです。

安全衛生上の不幸なトラブルが頻発し、なんとか悪い流れを断ち切るための諸施策のひとつとして始めたものでした。

モノづくり現場で最も重要な「業績の話」と共に、繰り返し、繰り返し伝えました。

 

安全衛生は、そもそも、現場の各メンバーが当事者。

管理者がどれだけ、頭から湯気を出して熱弁をふるっても現場の「心」に響かなければ浸透しなければ成果は出ません。

「繰り返し」という手段を用いて、現場に意識を浸透させないことには、どうしようもなかったわけです。

経営理念と安全衛生を繰り返し、繰り返し現場へ語る

 

「言葉」は経営者や現場リーダーにとって、とても大切な武器です。

政治家や作家、教師等と同様に、工場経営では、「言葉の力」を生かす視点を持ちたいです。

 

日本生命保険名誉顧問・前会長の宇野郁夫氏が企業統治を高めるための「言葉の力」の重要性を語っています。

 

このところコーポレートガナバンス(企業統治)に関するニュースを見る機会が多くなった。政府の旗振りもあって社外役員制度の導入などを通じ、日本企業が倍部の視点を積極的に取り入れるようになった。

ただ一方で、かって米企業エンロンの不祥事での露呈したように、単に形をつくるだけでは企業は強くならない。

経営に魂を吹き込む要素が必要だ。

(出展:日本経済新聞2016年10月6日)

 

利益の水増しによる不正会計問題を起こした東芝も日本では早い時期から委員会設置会社に移行し、こうした制度へ積極的に移行した点では「優等生」とみられていたようです。

しかしながら、その「優等生」企業が市場からの信用をおもいっきり失いました。

仕組みがあっても形骸化していた、仕組みに魂が入っていなかったというということです。

宇野氏はさらに次のように語っています。

 

この点、長い歴史を生き抜いてきた強み企業に共通しているのは、全社員に染み渡る「自らの言葉の世界」をもっているという点だ。

(中略)

日本でいえばトヨタ自動車・「カンバン方式」「カイゼン」といった言葉を世界の共通語に高めてきた。一昨年、業績見通しを前期比横ばいに据え置いた時の記者会見で、トップ自らが表明した「意志ある踊り場」という言葉も記憶に新しい。

停滞ではなく、次の成長に向けたステップであるという強いメッセージを打ち出した。

(出展:日本経済新聞2016年10月6日)

 

豊田章男社長が語った「意志ある踊り場」という表現は、私も記憶に残っています。

テレビに映し出されていた記者会見で豊田社長が語った言葉が耳に残りました。

イメージが浮かびやすい、メッセージ力のある言葉です。

社長自ら語った「魂」のこもった言葉、社内外へ強いメッセージが届いたことと思います。

まさに「言葉の力」です。

 

2.「サンケタ」と繰り返し、繰り返し、語った部門長

トップの重要な役割の一つはチームが目指すべき目標を明確に伝え、チームにそれを定着させることです。

その意味で記憶に残る言葉を発し続けた、私が勤務していた工場での部門長がいました。

90年代後半で、部門業績の調子が良かった時のことです。

 

工場単位で収益評価をしていたので、毎年、工場の事業計画を立てるわけですが、その目標のなかには、利益目標も当然ありました。

ある年のこと、1ケ月当たりの利益を1億円に掲げたことがありました。

その頃、工場の業績はまずますで、調子が良かったとは言え、前例のない、挑戦的な目標です、利益目標1億円。

この目標のことを、その部門長は、ひたすらに「サンケタ」、「サンケタ」と繰り返し、繰り返し、全体会議や部課長会議で伝えていました。

「サンケタ」。

最初は、これ何のこと?と理解できませんでしたが……。

 

これは、数値を百万円単位で表記した時の、1億円の桁数のことでした。

つまり、100,000,000円は100百万円と表記されます。

「100」の桁数のことです。

 

工場内での収益会議等で状況説明に使われる資料の数値は、百万円単位で、表記されていました。

そして、過去実績では数千万円の利益が最高でした。

ですから、従来は、××百万円であり、最高が「フタケタ」だった……。

そこから、ステージアップして一桁あげて1億円規模を目指そうとしたわけです。これが、「サンケタ」。

 

その方部門長は特別に表現力があったとか、語彙力があったとかいうわけでは、ありませんし、さらに言うならば、意識しないで、その表現を使っていたのかもしれません。

しかし、私には、この「サンケタ」という表現、「サンケタ」という言葉に部門長の想いを感じると共に、当時、その言葉が、しっかりと頭と心に刻まれました。

その部門長は、こうして現場で成果を上げ、その後、役員にまで出世しましたが、はやり、こうしたこだわりをもった語りができることも、リーダーとして欠かせない資質なのだなぁと、教えてもらった気もします。

 

言葉の力で人に動いてもらう重要性を認識しました。

心に響き、残るメッセージを届けるために言葉の力を意識します。

そしてシンプルに繰り返します。

組織のリーダーは、伝えたい想いを、自分が言いたい言葉ではなく、相手の心に響き、残る言葉、「言葉の力」を持ったメッセージ性の有る言葉を発したいです。

これは、意図して、意識してやらねばならないこと。心に留めておきたいです。

 

今でも、1億円のイメージは「サンケタ」であり、お陰で、百万円単位の数値表記には「強く」なりました。

3桁は1億円という実感があるからです。

 

想いをシンプルに繰り返し伝えると現場へ浸透しやすくなります。

経営者や現場リーダーは、「言葉の力」を信じて、シンプルな言葉を繰り返し、現場へ想いを届けませんか?

当然、その言葉には「想い」が込められていなければなりません。

 

まとめ。

想いをシンプルに繰り返し伝えると現場へ浸透しやすくなる。

経営者や現場リーダーは「言葉の力」に注目する。

 

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出展:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)