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若手技術者人材育成で「 専門性 」は重要ではない

若手技術者人材育成で「 専門性 」は重要ではない

若手技術者人材育成で「専門性」を重要視しているのであれば、それは間違いです。

技術者を育成する指導者層も「元・技術者」である場合が多いため、どうしても育成指針も専門性至上主義にとらわれてしまっています。

 

「知っていることこそ正義」

 

という内向きの考えでは世界では戦えません。何かを知っているだけで模試の偏差値が上がる受験生時代とは違うのです。

技術者人材育成の根幹

いかにして技術者という「人」を活かして、企業の利益を生み出すのかということこそ技術者人材育成の根幹です。

そのためには、「知っている」だけで満足する一般的な技術者ではなく、

「いかにして企業の利益を生み出すのか」

という目標に対して自主的に向かい、出てきた課題を解決するという実行力を有する技術者を育成することが大切です。

そのためには、知っているだけで満足する技術者を増やす専門性の教育ではなく、上述した「企業の利益」を生み出すための技術者人材育成指針を打ち立てることが重要となります。

専門性よりも大切なもの2つ

さて、若手技術者人材育成において専門性よりも大切なものは何でしょうか。

代表的なものとして2点ほどご紹介します。

1.技術者自身の熱意
2.文章作成力

1.技術者自身の熱意

この技術者の熱意というのが、実は技術者人材育成の最低条件です。

クライアントのお客様の中には、やる気のない社員にやる気を出すようコンサルしてほしい、とおっしゃる方もいらっしゃいますが、これは極めて困難なコンサルティングとなります。

人のやる気の有無というのが、仕事の内容に由来しているのであれば修正のしようもありますが、何を言ってもぬれんに腕押しのような状態の技術者のやる気を出させるのは極めて困難です。

技術者の熱意ややる気というのは、隔週で発行しているメールマガジンでも述べたように、

「採用の時点で見極める」

という姿勢が重要となります。
http://archive.mag2.com/0001644040/index.html

若手技術者のほうが伸びる確率が高いというのも、柔軟性に加え、この「熱意」を持っている確率が高いことが大きな要因です。

2.文章作成力

技術者の95%以上は文章作成力が低いのは紛れもない事実です。この原因は諸説あるようですが、技術者育成研究所は「専門性至上主義」こそがその根本的原因であると考えます。

なぜかと言いますと、専門性至上主義にとらわれている人は「知っていることこそ正義」と考えているため、知識を蓄える、ということに時間を費やします。このため、文章を「書く」という時間があまり取れなくなっていきます。

文章作成力というのは、大量の文章を書き、それを添削してもらうという労力と時間のかかるプロセスでしか向上しません。もちろん初めから文才のある技術者もいますが、それは全体の5%程度でしょう。

 

この文章作成力によって向上するのが論理的思考力です。

文章というのは「他人に読んで“もらう”」ものです。自分で読むメモとは違います。この、読んでもらう、見てもらうという客観的視点こそ、論理的思考力のベーススキルです。

よく、ロジカルシンキング、論理的思考法といった言葉が前面に出た書籍などもありますが、これらはすべて一般論でしかありません。この客観的視点を身につけることで、技術動向や市場動向、自社の置かれた状況を俯瞰(ふかん)して見ることができるようになり、

「自社の利益のためにできることは何か、課題は何か」

ということが見えるようになるのです。

 

技術者人材育成の重要項目から「専門性」を消去し、「文章作成力」を入れるようにしてみてはいかがでしょうか。

尚、若手技術者の文章作成力を鍛え上げるには、若手技術者よりも十二分に文章作成力の高い「指導者、添削者」が必要であるということは言うまでもありません。


技術者育成研究所所長・FRPコンサルタント。入社2~3年目までの製造業に従事する若手技術者に特化した法人向け人材育成プログラムを提供し、自ら課題を見つけそれを解決できる技術者育成サポートを行う。◎東京工業大学工学部高分子工学科卒業後、ドイツにある研究機関 Fraunhofer Institute での1年間のインターンシップを経て同大学大学院修士課程修了。その後、複数の大手メーカーにて技術者として勤務。専門外の企業に転職したときは周りの会話についていけないという苦境に陥るが、試行錯誤の末に活字を基本とした独自の思考法を確立、開発最前線で成果を積み上げたことにより最先端研究プロジェクトリーダーに昇格。また、自らの立ち直りに実践した思考法を応用した技術者育成法により、技術者人材育成に悩みを抱えていた事業部から、多くの自発的課題発見/解決型の技術者を輩出。当時評価の低かった若手技術者を事業部最年少海外駐在者として送り出すなど、技術者教育でも高い評価を得た。◎11年にわたる企業の技術者勤務の後、自らの専門性を生かし複数企業と直接顧問契約を結ぶFRPコンサルタントとして独立。川中から川下の企業の研究開発最前線での技術指導、サポートを行う中で多くの企業が技術者人材育成に苦労している実情に直面し、専門性を生かすも殺すも人材に大きく依存することを実感。さらに自らの技術者人材育成経験から技術者育成には一般的な人材育成と異なる技術者に特化した「技術者人材育成」が必要という考えに至った。その後、技術者に特化した人材育成プログラムがほとんど存在しないことに着目して「技術者人材育成研究所」を創業、FRPコンサルタントとしてFRPに関連する高い専門性の技術指導やサポートを行う一方、現場の技術者の人材育成にも精力的に取り組んでいる。◎主な著書に『CFRP~製品応用・実用化に向けた技術と実際~』(共著)など。◎Professional member of Society of Plastics Engineers( SPE; 米国プラスチック技術者協会)◎– 高分子学会(The Society of Polymer Science) 正会員◎– 繊維学会(The Society of Fiber Science/Technology)正会員◎– NPO インディペンデント・コントラクター協会(IC協会)正会員◎– 国立大学法人 福井大学 非常勤講師 http://engineer-development.jp/